東日本大震災の発生から50日が過ぎた。未曽有の大災害は、県内のさまざまな産業にも深刻な影響を及ぼしている。日本全体が戦後最大の危機に直面しているというべき状況の中、山形はどういう役割を担い、前に進むために何をすべきなのか。県内の各業界・団体の代表にインタビューした。
-県内経済にもたらす震災の影響をどうみているか。
「三菱東京UFJ銀行の調査では、過去の阪神大震災の直接被害額は約10兆円。二次、三次の間接的被害も加えると2倍超の22兆円だった。今回の震災で政府が発表している直接的な被害額16兆~25兆円から考えれば、全体の被害額は50兆円程度になるかもしれない。これは、日本の国内総生産(GDP)の10%、あるいは青森、岩手、宮城、福島4県のGDPの2年分に相当する大変なものだ。簡単に乗り越えられるほど甘いものではなく、非常に厳しい時代がさらに厳しくなるという覚悟が必要だ。元に戻るという発想はやめたほうがいい。国が一つになり、明治維新と戦後の二つの奇跡に続く3度目の奇跡を起こさなければいけない」
-立ち直るために、本県はまず何をすべきか。
「明治以降続いてきた中央集権国家に代わり、本当の意味での地方の時代をつくる好機にしたい。東北の発展を考えた場合、まずは仙台を中心とした宮城経済圏を再興させることに山形としても最優先で協力していく必要がある。東北の中心である仙台圏の復興なくして、山形だけ変わるというのは無理な話だ。宮城に依存することが悪いわけではなく、本県は世界、日本、隣県に依存して生きていくのは当たり前。依存しながらも山形にしかない強み、特徴をどう出していくかを考えるべきだ」
-今後の山形の役割と進むべき方向は。
「今回の震災では、仙台だけに機能が集中する“単線化”の危うさと同時に、本県の役割、存在意義もはっきり見えた。本県の酒田港や山形空港などが果たした“複線”の役割は大きく、その重要性が再認識されたのは事実だ。“単線化”は効率的だが、安全が守られるには“複線化”や“二重都市”の存在が必要だと大きな声を上げるべきだろう。安全・安心は十分な強みになり、そのための県づくりや、付加価値の高いものづくりに向けたインフラ整備を県はしっかり進めてほしい」
-地域の金融機関としてどういう役割を果たしていくのか。
「当然ではあるが、本県の地銀も含め金融機関は震災直後から役割をよく果たした。現金の代払いに応じたり、ボランティアとして行員を出したり、義援金を出したりと、陰に陽に協力してきた。今後の問題は、お客さまをどうサポートしていくかだ。顧客の希望をよく聞いた上で、経営の方向性をアドバイスしていく段階に入った。難しい問題は多いがしっかり支えていかなければいけない。金融再編については、避けて通れず、この震災を契機にさらに加速していくのでないか。復興支援に向けた基盤強化として公的資金導入の動きも出ているが、山形銀行としては自己資金で十分対応可能だと思っている」
次回は森岡国男・県半導体関連産業振興協議会長です。
山形銀行の長谷川吉茂頭取