1年前のゲリラ豪雨は、南陽市の基幹産業である農業にも甚大な被害をもたらした。尽きない自然災害への不安を抱えながら生産者たちは、今年も自慢の作物づくりに汗を流している。
「今年は収量が期待できそう」。国道13号鳥上坂周辺にブドウ畑を所有する果樹農家佐藤寛幸さん(58)はうれしそうに色付き始めたデラウエアを見つめた。
鳥上坂周辺の40アールほどでデラウエアとナイアガラを栽培し、12アールに土砂や倒木が流れ込み畑が崩れた。実割れも発生し、昨年のデラウエア収穫量は約3千キロに半減。荒れた畑の片付けは降雪前までに終わらなかった。現在もブドウ棚が壊れたままの場所があり、1年前の被害の大きさを感じさせる。ブドウは収穫できるようになるまで5年ほどかかる。「新しく植えないことにした。今あるブドウを大切に育てる」と佐藤さんは気持ちを切り替える。
畑の斜面上部に大型土のうを設置する市の対策工事が行われることになり、6日から草刈りなど下準備が始まった。ブドウの本格的な収穫ももうすぐ。「去年の分も取り戻したい。これから1カ月、大雨にならないことを祈るだけだ」。佐藤さんは静かに語った。
色付き始めたブドウを見つめる佐藤寛幸さん。昨年の分を取り戻そうと汗を流している=南陽市赤湯
昨年、「つや姫」など作付けした約4.2ヘクタールのうち4分の1ほどが吉野川から逆流して流れ込んだ土砂で埋まった同市俎柳のコメ農家横山正彦さん(62)の田んぼ。荒れたグラウンドのようだった惨状がうそのように、50センチほどに伸びた稲が“緑色のじゅうたん”となって広がっている。
吉野川の最下流部に位置する俎柳地区。横山さんを含め生産者9人の田んぼ約3.25ヘクタールが土砂や流木などで覆われ、昨年はその大半が収穫をあきらめざるを得なかった。県と市のいち早い対応や国からの補助金もあり、雪解けを待って4月に土砂の撤去作業を実施。田んぼには鉄板が敷かれた簡易道路ができ、大量の土砂を積み込んだ大型ダンプが行き交った。「道路整備でもしているかのような光景だった」と横山さんは話す。
5月16日、例年通りの時期に田植えができた。その後は天候に恵まれ、「生育は順調。秋の収穫が楽しみ」と横山さん。一方で「ゲリラ豪雨による水害は河川のせいだけじゃない。昔は貯水機能にもなっていた農地がどんどん減っていることも大きな要因。地域農業そのものの見直しも必要だ」と指摘する。
去年、土砂で埋まった田んぼ。今年、作付けした稲の順調な生育に横山正彦さんも目を細める=南陽市俎柳
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