吉野川と織機川流域の住民生活を一変させた昨年の豪雨被害をきっかけに、災害時の高齢者支援など地域の連携が強まった。一方、河川工事は進められているが、完了まで最長4年かかることになっており、「また今年も大雨だったら」と住民の不安は拭い切れない。
市総合防災課によると、昨年の豪雨で住宅や店舗など建物への被害は825軒。織機川流域の漆山地区は被害軒数は少なかったが、半壊2軒、床上浸水が16軒など1軒当たりの被害が大きかった。
同地区は災害時に支援が必要な一人暮らしの高齢者リストを作成し、民生委員や隣組長らが情報を共有している。例年夏に情報を更新していたが、豪雨を受け、今年は梅雨前の6月に集約した。織機川沿いに一人暮らしする桑原正子さん(80)=池黒=は支援が必要な一人。昨年は気付いた時には玄関まで水が押し寄せ、自宅2階に避難した。今年は消防団が準備してくれた土のうを玄関先に置き、万一に備えている。「みんなにお世話になって大変ありがたい」。住民の共助による防災意識が高まっている。
県から移転の要請を受けた高橋正子さん。自宅そばを織機川が流れている=南陽市池黒
織機川の工事は2016年度までの3年計画。一部で河道を掘削するなどの抜本的な工事が進められている。「工事が目に見えてきたのは先月から。もう少し早くできなかったのだろうか」と話すのは工事現場のすぐそばに暮らす50代女性。県置賜総合支庁によると、昨年秋に工事の事業化が決まったが、降雪期を迎え、着工は今年4月になった。周辺の木の伐採などの下準備があり、本格的な工事が最近になったという。女性は「自分では工事ができないけれど」と前置きした上で、豪雨再来への不安を口にし、一日も早い工事完成を望んだ。
河道拡幅や管理道路設置のため、家屋移転の必要が出てきた場所もある。自営業高橋正子さん(67)=池黒=は先月、県から具体的な移転の説明と要請を受けた。設計図を見て驚いた。家の大部分が拡幅工事にぶつかっていたからだ。ボランティアの協力で、やっとの思いで泥を片付けた。夫と次男の家族3人で話し合っているが、はっきりした答えは出ない。「離れたくない。でもまた水があふれても困るし、しょうがないのかも…」。高橋さんは静かに川を見つめた。
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