やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第2部・原点に立ち返る[7] 出羽三山Ⅳ

2014/3/5 09:10
出羽三山の参拝者を迎える宿場街を雪で再現する「雪旅籠(はたご)の灯(あか)り」。当時のにぎわいを取り戻そうという新たな事業が始まっている=2月21日、西川町・月山志津温泉
出羽三山への「東の奥参り」を復興させようと事業を進める仕掛け人たち。実現すれば本県観光の大きな核となる=山形市

 江戸時代、西の伊勢参り(三重県)と並び、自己の内面に向かう旅として広く行われていた出羽三山への「東の奥参り」。双方を訪ねることは「現世での幸せ、死後の平安、生まれ変わりの約束を神々と取りつけることになるといわれていた」(渡部幸出羽三山歴史博物館学芸員)という。この奥参りを再び盛んにしようという新たな取り組みが始まっている。

 「東の奥参り再興プロジェクト」。出羽三山を核にした観光施策は多くが庄内中心だったが、これは主に内陸側からのアプローチだ。村山地域7市7町で組織する「めでためでた♪花のやまがた観光圏」に、鶴岡市と出羽三山神社が加わって展開する。神の池として信仰を集めてきた羽黒山の「鏡池」に、かつて多くの銅鏡が奉納されていた史実に着目。これを新たなスタイルで復活させた「鏡奉納特別参拝」のツアーなどを実施する。同神社がこのプロジェクトに限定して認める。

 山形市出身の彫刻家松田重仁さん(神奈川県)がデザインする鏡を、願い事を記した紙とともに奉納。鏡のお守りを記念品として持ち帰る。

 この「祈り」に、月山などを歩くエコツーリズムと精進料理などの自然食を加え、30~40代の女性旅行者をつかむ考え。西川町月山志津温泉の宿泊との組み合わせや、月山、湯殿山を巡るプランも計画中だ。

 さらに、式年遷宮が行われた昨年、1420万人に上った伊勢神宮の参拝者へのPRを計画。伊勢から出羽三山への流れを再びつくれれば、大きな誘客につながるとみる。

 「東の奥参り再興プロジェクト」は、JTB東北(仙台市)の提案を基に、「めでためでた♪花のやまがた観光圏」と鶴岡市、出羽三山神社が実施する。行政中心の旅行商品造成の施策は、商品企画やプロモーションが中心で、いかに流通させるかが課題になる。このプロジェクトは商品販売の仕組みまで構築した点が従来と大きく異なる。

 先行しているのが鏡池への鏡奉納特別参拝。羽黒山山頂から山伏の案内で鏡を奉納した後、三神合祭殿を参拝し、精進料理を食するプランで、参拝料や御朱印帳、記念品、食事を合わせて7800円に価格設定した。このプランの旅行業者への販売を、県内の小規模旅行会社が協力して設立した旅行代理店「山旅(やまりょ)」(山形市)が担当する。各業者は山旅から仕入れ、一般旅行者に販売する仕組みだ。

■1人でも催行

 現地を訪れてから申し込む個人旅行者向けは、鶴岡市羽黒町観光協会(いでは文化記念館内)を窓口とする。毎日1人からでも催行できるのも売りで、既にJTBグループでの一般販売が決定しているほか、検討中の旅行業者も多い。

 プロジェクトではさらに、旅行者の足を確保するため、県内空港に就航する航空会社や大手レンタカー会社との連携も模索している。

■魅力的ルート

 「めでためでた♪花のやまがた観光圏」が東の奥参り再興の動きを起こしたのは、内陸側にも奥参りの歴史が数多く刻まれており、圏域で長期滞在してもらうには魅力的な広域観光ルートが不可欠だからだ。事務局を務める山形市観光物産課の青木哲志係長(52)、ベースになる事業を提案したJTB東北の佐羽根博一地域交流事業推進事業部プロデューサー(37)、全体を統括する観光事業企画などのアイサイト(山形市)の馬場誠社長(53)は「東の奥参りという本物の素材なら山形県の観光の軸になり得る」との認識で一致した。事業化できたのは「神社が協力してくれたからこそ」と青木係長は振り返る。

 この取り組みを通じて、村山と庄内を結ぶ観光ルートを太くできることも大きな収穫の一つだ。県外に伸ばした広域観光にも発展しやすくなる。旅行商品は6月に始まる山形デスティネーションキャンペーン(DC)を機に発売される。DC後も継続して「東の奥参り」再興を実現できれば、本県全体の観光振興の起爆剤になる可能性を秘めている。

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