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挑む、山形創生

第7部変わるU・Iターン(5) ヤマガタ未来ラボ・田中代表(山辺出身)に聞く

2016/9/3 10:20
ヤマガタ未来ラボの田中麻衣子代表

 少子高齢化が進み、若者の転出が続く中、人材不足にあえぐ企業にとってU・Iターン者は貴重な「資源」となる。しかし、採用は必ずしもうまくいっていない。人材を獲得し、活用していくためには何が必要か。U・Iターンの支援に取り組むヤマガタ未来ラボ代表で、人材コンサルタントの田中麻衣子さん(32)=山辺町出身=に聞いた。

■家族のために

 ―一般的に、どんなきっかけや動機がU・Iターンにつながっていますか?

 「両親の介護や子育てなど家族のために選択する人が目立ちます。もう一つは都会疲れ。満員電車などのストレスです」

 ―積極的とは限らない。

 「起業などの目標がある人ばかりではない、という意味では。ただ、Uターン者の多くは前提として地元愛があります。帰ることに抵抗はない。でも、東京を離れる理由もないので行動につながらない。何らかの事情をきっかけに決断している印象です」

 ―決断したからには満足いく結果にしたい。必要なことは。

 「第一に、価値観に優先順位をつけること。仕事のやりがい、生きがい、家族、収入など、自分にとって何が大事かを整理します。それを実現するためにU・Iターンが選択肢になるか、しっかり考えることが大事です」

 「U・Iターンしたとして、避けたいのは地域や職場での孤立。地域活動を始めてもいいし、外に出て人に会うだけでもいい。本人が前向きであることが大切で、家族や友人の支え、会社の理解も欠かせません」

 ―県内の正社員有効求人倍率は高まっています。しかし、採用がうまくいかない状況がある。

 「条件だけの求人票を出して待っていても、他社と比べられるだけ。自社の持ち味、特徴を魅力として伝える必要がある。人材バンク、人材紹介サービスなど採用手段はたくさんあります。何のために、どんな人材が必要か。企業側が戦略を練り、人材をとりにいく必要があります」

 ―連載ではリモートワークも取り上げた。首都圏の企業がこうした働き方を取り入れている理由は。

 「戦力となっていた人材を手放さないため。インターネットを活用すれば場所にとらわれることなく働ける。IT以外の業種にも可能性が広がっています」

 ―働く側にもメリットがある。

 「会社や仕事に不満がなく、続けたいと思っている人にとって、やむを得ない事情での退職は悩ましい。同じ仕事を続けられることは大きなメリットです」

■不都合な人材

 ―とはいえ地元にとっては不都合。山形に来た人材を獲得できない。

 「採用という点では競合しますが、仕事上の取引相手になるかもしれない。人手が必要になれば、雇用の創出になる。後に独立する可能性もあります」

 ―人口減少が進み、働き方の選択肢が広がる中、どうすればU・Iターン者に選ばれる企業になれるか。

 「地方にはU・Iターン者を『不都合な人材』と見る企業がいまだにある。経験豊富で弁が立つので、トップダウンで経営してきた企業にとって扱いづらい面もある。しかし、人口減少の時代。生産性を向上させ、少ない人数で会社を回すためには、自ら考えて動く人材が必要です。社員が働きやすく、働きがいを感じられる職場を目指す。そのための工夫と変化が企業側に求められています」

(「挑む 山形創生」取材班)

 ▽たなか・まいこさん 1984年1月生まれ。県内企業に一度就職した後、東京へ。求人広告代理店で3年間、企業の採用支援を行う。2010年に山形をPRするサークル活動を都内で開始。情報サイト・ヤマガタ未来ラボを立ち上げ、首都圏でのU・Iターン支援企画などに取り組んでいる。人材紹介事業を行うキャリアクリエイト(山形市)の人材コンサルタントも務める。都内在住。

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