NIBフロントライン

山形日産自動車社長
小関眞一氏
小関眞一氏
【インタビュー】
 ―業界の現状を踏まえ、求める人材像は。

 「自動車業界では今後、ハイブリッド車(HV)の他、プラグインハイブリッド車(PHV)電気自動車(EV)燃料電池車(FCV)など、二酸化炭素(CO2)排出を抑制する新エネルギー車への転換が進む。究極は自然光で発電し、走る車だ。ガソリン車、ディーゼル車から徐々に買い換えが進むだろう。最も変わるのは安全面。今、自動ブレーキ、踏み間違い防止機能付きのセーフティー・サポートカー(サポカー)の導入が進んでいるが、近く人工知能(AI)を利用した自動運転機能も入る。本県は自家用車の世帯保有率が全国トップクラスで、車は生活になくてはならない。われわれはただ車を売るだけでなく、お客さまに生活を提案できる存在になりたい。車の代替えサイクルの間隔が延びており、1台を長く乗るお客さまが多い。それだけ社員との付き合いも長くなる。さらに整備、保険など提供サービスも増え、接する時間も増えている。きめ細かいサービスの提供も求められる。お客さまが付き合いたくなる魅力ある社員になってほしい。車の営業は井戸掘りと同じ。掘っても水が出るか分からないが、掘らないと出ない。諦めない心も必要だ。お客さま、地域あってのわれわれ。地域や社会に貢献できる人間であってほしい」

 ―求められる人材になるため、どのような能力が必要か。人材育成のため、取り組んでいることは。

 「仕事には、Smile(スマイル、笑顔)Story(ストーリー、物語)Speed(スピード、早さ)Spirit(スピリット、魂)の四つのSが大切。四つのSを極めればForce(フォース、力)になる。社員向けには研修、社員旅行を繰り広げ、見聞を広める機会を設けている。心が前向きになる投資だ。苦労も成長の大事な要素。上から与えられるのではなく、自分で見つける目標も大切になる。そこに向かい、一流の仕事をこなしてほしい。会社員は人生の7割の時間を職場で過ごす。厳しさの中でも楽しく仕事できるよう、店長に明るい職場づくりを呼び掛けている。仕事は苦しみが多いが、経営者は社員の仕事ぶりをよく見て、存在感を認めることが求められる」

 ―仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「前社長で父の小関善久会長だ。昭和一桁世代なので、骨太。仕事に厳しく、不撓(ふとう)不屈を絵に描いたような人だ。若い頃はよく叱咤(しった)激励を受けた。父は現場主義を貫いた。私も見習いたい」

 ★小関眞一氏(こせき・しんいち) 立正大経営学部卒。1979(昭和54)年、日産サニー山形販売入社。90年に山形日産自動車に取締役営業副本部長として入り、99年から社長。日産プリンス山形販売、山形日産自動車販売、日産部品山形販売などグループ各社社長も務める。2014年2月から全国組織の日本自動車販売協会連合会(自販連)副会長、15年2月から自販連県支部長と県自動車販売店協会長を務める。今月26日から自販連会長を務めることが内定している。山形市出身。61歳。

 ★山形日産自動車 1961(昭和36)年創業。県内に11店を展開し、日産自動車の新車販売や車検、点検、整備を手掛ける。仏ルノー車の正規販売店。資本金9750万円。従業員数193人。グループ全体では販売店約30店、従業員数約800人。本社所在地は山形市南一番町9の10。

【私と新聞】読む読まない、大きな差
 小関眞一社長は「新聞の社説は世の中の動きを知る大切な手段」と語る。紙面に目を通す時間がないときは、スマートフォンやタブレット、パソコンの画面上で閲覧できる山形新聞の読者限定電子版「やましんe聞」を利用するという。

 社員に読んでほしい記事は切り抜き、閲覧してもらう。「地方紙を読まなければ、一流のビジネスマンになれない。読むのと読まないのでは仕事に雲泥の差が出る」と力を込める。顧客が紙面に載ることがあり、話題の端緒になるからだ。

 「インターネットは読みたい部分だけしか見えず、木を見て森を見ず。逆に新聞からは幅広い情報を得られる」と指摘。「『新聞は幕の内弁当』と聞くが、その通りだ」と話す。山形新聞に対しては、「おかずが豊富な“幕の内弁当”になってもらい、山形の活性化のため、地方紙としての責任を果たし続けてほしい」とメッセージを送った。

【週刊経済ワード】ベア
 基本給の水準を一律で引き上げるベースアップの略称。年齢や勤続年数に応じて賃金が上がる定期昇給(定昇)とは別に、賃金体系全体を底上げする。業績に応じて柔軟に上下できる一時金(ボーナス)に比べ、恒常的な人件費の増額につながるため、春闘では労使が対立することが多い。
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