-東日本大震災は県内各業界に大きな影を落としたが、中でも観光・旅館業に与えた影響は大きかった。
県内の旅館では、ほぼすべての予約がキャンセルになった。山形新幹線・東北自動車道の不通やガソリン不足で来館手段がなくなったことに加え、自粛ムードが響いた。総会や会合が中止された影響も大きかった。
-徐々にだが客足が戻っていると聞くが。
まだ自粛は続いている。残念ながら、山形を含めた東北全体に原発事故の影響があるとイメージされているお客さまは多い。数年前の新型インフルエンザの時もそうだが、一般的に風評被害は、数カ月で解消されると考えるが、今回は原発事故の問題。国際評価尺度で深刻度が最悪のレベル7とされ、原子炉が安定するのに6~9カ月とされている。観光は平和産業。不安心理が及ぼす影響は大きい。原発が安定するまでは厳しい。
-現状打破に必要なことは。
山形県だけでなく、東北新幹線や東北道が安全に通れると分かれば、お客さまは東北に来ると思う。今はグレーゾーンのようにとらえている方が多い。理由は、日本政府と、諸外国や国際機関の認識、評価とにずれがあること。協力して活動し、同様の評価で発表してほしい。
-全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会長でもあり、旅館業界として、被災者の受け入れのため、震災直後から積極的に動いた。
直後は特に寒さが厳しく、低体温症などにならないよう早急に旅館やホテルで休んでもらおうと震災2日後の3月13日から各県の旅館組合や国に働き掛けを始めた。ほどなく全国の旅館組合で10万人を受け入れられる見通しも立ったが、二次避難としては行政の準備もあり、受け入れは4月中旬になってからになった。しかし仕組みはできたので、今後、万が一の災害があった際、一刻も早く被災者を受け入れられたらいい。
-今後、業界としてどうすべきか。
海外にPRすべきだという人もいるが、原発の問題もあり、今すぐは厳しい。原発の安定化が望まれるが、まず日本国内の人が旅行する姿が見られないと海外へのアピールは弱い。県内でも同じことが言える。まず県内の自粛ムードや風評被害をなくしていかないと、首都圏に、全国にPRするのは難しい。
業界内では、雇用調整助成金などを活用し、雇用を守らなければならない。全旅連として、金融面やその他支援についても国にお願いしている。こういう時でも、お客さまには笑顔で接していかなければならない。時間がかかるだろうが、必ず回復すると思う。ともに頑張ろう。
次回は渋谷忠昌・県建設業協会長です。
古窯の佐藤信幸社長