政府の地震調査研究推進本部は全国110の活断層帯を選定し調査・評価しているが、それは社会的に大きな影響を与えると想定される断層に限られている。地震調査研究センター作成の資料「地震がわかる!」によると、日本には約2千の活断層があるという。では、活断層はどのようにして判別するのだろうか。核となるのは、映画などで身近な3D技術だ。
痕跡を読む
同じ地域を違う角度から撮った2枚の空中写真を使用。視覚のずれを利用して2次元の像を3次元に錯覚させる手法で、もともとは地図作製や軍事目的で開発された技術という。
陸のプレート内部で大地震が発生すると、断層のずれが地表にまで現れ、地層や地形を変形させることがある。長い年月の間に大地震が繰り返し発生することで変位は積み重なり、特徴的な地形がつくられる。そうした痕跡を立体視することで読み解いていく。
小国川(舟形町)周辺の大地が動いていると実証した杉村新の著書「大地の動きをさぐる」には、論文で空中写真判読を活用したエピソードが記載されている。「一九六二年にとりあえず『科学』誌に阿寺断層左ずれの報告を投稿したが(略)写真を整理しているうちに、たいへんよく似た図柄のが二枚でてきた(略)見くらべているうちに、うまいことに思いついた。これはもしかすると立体視できるかもしれない」。現代では映画館やゲームで楽しめる3D技術が、活断層研究を大きく前進させた。
村山市の扇状地。雪原の中央で横長に黒っぽく見えるのが、断層運動で盛り上がった高森山断層(八木浩司教授提供)
単純な原理
「活断層の認定の原理は極めて単純」。山形大教授の八木浩司は話す。例えば河川がつくった扇状地は、上流から下流に向かって必ず一様な勾配でなめらかに高度を減らすのが自然の摂理。ところが、その勾配が突然急になったり、下流側が上流側よりも逆に高くなっている場所があり、そうしたケースを地形学では活断層による変位地形の可能性が高いと判断するという。「もちろん、火山岩のような浸食されにくい硬い岩が川筋に沿ってある場合もあり、最終的には現地調査で確かめる」
山形盆地断層帯の高森山断層を例に判読してみる。写真奥に見えるのが葉山、そして左奥は月山。手前に向かって樽石川がつくった扇状地が広がるが、その途中、雪を切り取ったように高森山の盛り上がりが見える。本来なら扇状地形は葉山のある西から村山市街地の東に緩やかに傾斜していくはずだが、高森山は扇状地を遮るように南北に位置する。
「例えば山形市の千歳山はマグマが上がってきた火山の火道が長年の浸食によって硬い部分だけ残ってできた円すい地形。しかし、高森山は細長く、川に直交するように位置している。しかも軟らかい地層であり、浸食されたものではないことが分かっており、活断層と断定できる」=敬称略
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