国内で初めて活褶曲(かつしゅうきょく)が報告された舟形町の小国川。地殻変動研究の発祥地として知られるこの周辺は、もう一つ先進的な調査が行われた場所でもある。
1997年夏、東京大学地震研究所を中心としたグループが実施した反射法地震探査。活断層直下の内部構造を探る最先端の研究で、「全国で2番目の調査地点。新庄盆地断層帯の全体像を解明する上で、貴重な資料となった」。調査に加わった山形大教授の八木浩司は振り返る。
動かぬ証拠
地震とは地球内部の破壊現象。地下の岩盤に蓄積したひずみが限界を超え、断層面が急激にずれ動くことで生じるエネルギーが地震動の正体だ。破壊の結果、地表に現れる変動地形は、大地震によって刻み込まれた「地球の傷跡」とも言える。地形学を専門とする研究者は、その痕跡を基に活断層を特定してきた。
しかし、そうした地形は浸食や地滑りなど、地震以外によってもできるのではないか-以前は懐疑的な見方も少なくなかった。それなら地下構造を調べて「動かぬ証拠」をつかもう。97年夏、研究グループによる挑戦が始まった。
メンバーは東大地震研、山形大、千葉大、山梨大、東北大など、全国各地から地形学や地質学の専門家がそろった。調査地点は小国川の北側と南側で、新庄市芦沢から舟形町沖の原を通り、奥羽本線、国道13号を横切る東西約14キロ区間。97年7月から8月にかけて、東大地震研が所有する震源装置で大地に震動を与えては、15メートル間隔で配置した受振器で反射波をキャッチ、次の地点へ移動するという地道な作業を繰り返した。
その結果、奥羽山脈西麓に位置する経壇原断層(現在は活動しておらず、活断層ではない)付近の地下に東側傾斜の断層線があることが判明。また、盆地中央部を並走する舟形、沖の原、長者原の各断層地下でも地層が斜めに切れていることが分かった。「地形の変形や地表付近の地質から、地下構造はある程度予想されてはいたが、データ解析によって目に見える形ではっきり分かった。地下構造を重ね合わせることで、変動地形による活断層認定の正しさが裏付けられた」と八木は言う。
圧縮の影響
反射法地震探査では、さらに、新庄盆地下の地層が褶曲していることも浮き彫りになった。研究グループがまとめた新庄盆地下の断面図を見ると、経壇原断層の地下では地層がほぼ垂直に変形。舟形、沖の原、長者原の3断層下ではいずれも同じように波打っており、東西圧縮の影響が地層に現れている様子がよく分かる。
「活褶曲が発達する場所は地殻変動が活発で、地震が起こりやすい。活褶曲が多くみられる新潟県ではマグニチュード(M)7前後の地震が繰り返し発生している」と八木。
大地震は決してひとごとではない。褶曲構造が鮮明にあぶり出された新庄盆地下の断面図が、そのことを示唆している。=敬称略
【ズーム】活褶曲 現在も変形が続いている地質構造。褶曲は、堆積当時水平だった地層が地殻変動による圧縮力で波状などに変形する現象で、新庄盆地では数多くの活褶曲が確認されている。舟形町の小国川周辺では1940年代以降、活褶曲に関する研究が進められ、大地が今もなお動いていることが実証された。
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