第3部・連携実施の先駆け(1) 置賜(上)~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第3部・連携実施の先駆け(1) 置賜(上)

2022/1/30 15:25
県内の自治体病院再編の先駆けとなった公立置賜総合病院(上)と、サテライト病院の長井(右)、南陽(左)両病院のコラージュ

 全国に先んじて高齢化・過疎化が進む本県から、未来に持続可能な地域医療の在り方を問う「明日につなぐ地域医療」。第3部では、県内で先行している地域医療連携の事例から、各地に共通する課題をどう乗り越えて実現してきたのかを示し、将来に向けてさらに何が必要かを考える。

 公立置賜総合病院(川西町)は長井、南陽、川西の三つの市町立病院、飯豊町診療所を再編し2000年に開院した。2市2町と県が広域病院組合をつくり、運営を始めた。こうした自治体病院の再編は全国的にも先駆けで、開院当初は各地から視察が相次いだ。

 開院前、置賜には飯豊以外の7市町に自治体病院があった一方、県内4地域で唯一県立病院がなかった。高度救急を提供する3次医療機関だけでなく、集中治療室(ICU)すらない状況。「他の地域で救われる命も置賜では救われない」。こんな言葉がささやかれた。特に長井市、南陽市、川西町では病院経営に加え、自治体の一般会計も厳しい傾向にあった。

 再編により、既存の自治体病院はサテライトになった。約460床の長井病院は4分の1、約250床の南陽病院は5分の1に病床を減らし、約100床あった川西は無床の診療所に。新たにつくる総合病院に人材や機器などの医療資源を多く必要とする急性期、高度急性期を集約し、サテライトは回復期に特化した。今、必要性が盛んに指摘されている病院間の機能分担に先んじて取り組んできた。

 一方、人口が多い米沢と、既に単独で新病院の建設計画を進めていた高畠、白鷹、小国の4市町は組合に加わらず、それぞれが自治体病院を存続させる道を選んだ。

 全国に注目された開院から20年。新型コロナウイルス感染症治療を含め、同病院の存在は置賜地域の医療レベルを確実に向上させた。だが、医療圏の人口が加速度的に減る中、新たな課題も見えてきている。

 公立置賜総合病院開院に向けた動きは都道府県単位の地域医療構想が示される15年以上前。「相当早い段階で機能再編をしてきた。それが医師や医療機器の集約、医療レベルの向上につながった」。整形外科医であり、開院時から在籍する林雅弘院長(65)は強調する。本年度当初で研修医を除いた常勤医の数は開院当初の1.5倍の104人。運営に参加していない周辺自治体の病院への医師派遣元の役割も果たす。

 地域の病院や開業医との役割分担も進めた。2003年度に始めた登録医制度では、地域の医療機関が同病院に紹介した患者の治療経過情報を共有するほか、治療方針の相談や診療技術の研修ができ、現在、地域医療機関の医師146人が登録している。顔が見える関係を築いた結果、患者に占める地域の医療機関から紹介を受けた人の割合(紹介率)は75%、同病院で治療して症状が安定し、地域の医療機関に受け渡す逆紹介率は80%を超えている。

 経営面は成果が見えづらかったが、16年度以降は純損益ベースで黒字が続く。経営上の転機といえるのが17年に地方公営企業法の全部適用に踏み切ったこと。構成団体の市町長らによる合議から、新設された常駐の企業長が意思決定する形となり、判断速度が上がった。

 基幹病院とサテライト病院の幹部クラスで月1度、経営戦略会議を開き、転院調整を含めた医療サービスや経営上の課題を共有、改善する取り組みを進めている。職員数も増やしやすくなり、看護師や、退院支援に当たる社会福祉士らを増員した。医療の質が向上するとともに、入院日数の短縮にもつながり、高い診療報酬を得られるようになった。それでも、医療行為による収入から費用を差し引いた医業収支を黒字にするのは難しく、構成自治体の負担金などを頼りにする状況は続く。

 将来的に人口減少の影響を受けるのは地域の中核病院も例外ではない。昨年度の同病院の入院患者は長井、南陽、川西、飯豊が6割超を占め、人口減少率が最も緩やかな米沢市からは1割程度にとどまる。仮にこのままの動きが続けば、患者の減少、急性期医療の需要減が見込まれる。

 山形大大学院医学系研究科の村上正泰教授(47)は「専門的な診療機能を維持するには、急性期を担う米沢市立病院との役割分担を考えなければいけない。超高齢化社会に向け、サテライト病院が軽症の急性期に今よりも対応するなど、さらに機能を整理していく必要がある」と指摘する。

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