第3部・連携実施の先駆け(4) 日本海ヘルスケアネット・(上)~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第3部・連携実施の先駆け(4) 日本海ヘルスケアネット・(上)

2022/2/3 13:10
日本海ヘルスケアネット「地域フォーミュラリ」のリスト。安全性や効能、経済性、安定供給可能かなどで選定する

 日本海総合病院が中核となり、連携の先進例に次々と挑む地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」は2018年11月、全国初の地域フォーミュラリを導入した。フォーミュラリは直訳すると処方集。同法人の中でも、目玉となる取り組みの一つと言える。

 フォーミュラリは有効性や安全性、経済性を総合的に評価し、作成した医薬品の使用指針のこと。医療機関や地域単位で作成することで医療費の削減効果を狙う。「最新の研究に基づき、効果もある先発医薬品(新薬)に頼るだけでなく、経済的に優れる後発医薬品(ジェネリック)でも十分な効果が得られるケースは多い」と酒田地区薬剤師会の佐藤義朗会長(61)。単純にジェネリックを使うということではない。地域で疾患や症状ごとに最適な医薬品は何かを考え、リストにして推奨するという。

 医薬品を作り出す創薬には費用や時間、技術が必要で、新薬には特許期間が設けられている。このため、価格も高くなる。一方、ジェネリック医薬品は特許期間終了後に同じ成分で作られ、比較的安価なのが特徴。量産しやすく、安定供給の面でも強みがある。

 ジェネリックという選択肢も積極的に推奨することで医療費を削減し、患者の負担を軽減することができる。このための指針を地域全体で共有しようというのが地域フォーミュラリだ。

 地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」は日本海総合病院と酒田地区の医師会、歯科医師会、薬剤師会など9法人(現在は10法人)が参加し、2018年4月に設立された。全体の経営最適化や診療機能の集約、機能分担に加え、持続可能な地域医療の提供、医療費の削減も目的の一つ。診療報酬の削減にもつながる地域フォーミュラリの導入は、設立当初から検討が行われた。

 地域フォーミュラリの推奨医薬品のリストは、医師会長、薬剤師会長、日本海総合病院の院長らで組織する「作成運営委員会」が作る。地域の医療の実情をきめ細かく反映し、患者と接する医師の考えや意見も盛り込むためだ。

 対象となるのはインフルエンザやアレルギー性鼻炎など日常的な疾患や生活習慣病などの薬剤。21年5月現在、11の疾患や症状に薬効がある26種類の薬剤がリストアップされている。大学病院などで使用するような特殊な薬や発売間もない新薬はリストには入れていない。

 先発薬に劣らない効果が得られ、安全性が確認されていれば比較的安価な後発医薬品(ジェネリック薬)を選んでいる。選定理由は作用時間が長いこと、眠くなりにくい、安全性が高い―など。安定供給も重視している。輸入原薬の製造過程や品質、政情不安や災害で入手できなくならないかまで確認する。

 リストにある医薬品の処方はあくまでも推奨だが、多くの調剤薬局がリストを活用し、薬剤費の削減効果が表れている。北庄内にある63の調剤薬局のうち、41の薬局のデータでは、アレルギー性鼻炎の患者に処方する抗ヒスタミン薬で20年の薬剤費が19年に比べ1258万円、主要な薬剤6種類で見ても5800万円以上減り、いずれも前年比で13%削減できた。

 マイナンバーで個人情報を管理し、常用薬などの情報を地域の保険薬局が共有する調剤情報共有システムも導入した。重複した薬の処方や予期せぬ副反応、患者の過剰な出費を抑えることができる。地域内の医薬品の動きを把握することができ、適切な服薬指導にもつながっている。

 酒田地区薬剤師会の佐藤義朗会長(61)は「全国でこうした取り組みが進められれば診療報酬は大きく削減できるはず」と指摘する。「医療費の削減や患者の負担軽減だけでなく、薬局が抱える医薬品の種類が減り、在庫管理の負担も軽減された」と薬局にとってのメリットも強調した。

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