第3部・連携実施の先駆け(5) 日本海ヘルスケアネット・(下)~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第3部・連携実施の先駆け(5) 日本海ヘルスケアネット・(下)

2022/2/4 14:22
本間なかまちクリニックの透析室。70床を備え、透析患者を支えている=酒田市

 広い空間にベッドが並んでいる。酒田市内中心部・中町3丁目の本間病院「本間なかまちクリニック」の透析室。ここは北庄内地域の人工透析を受ける患者にとって、欠かせない場所だ。地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」の中で、同病院は症状が安定した腎臓病患者が日常的に受ける維持透析を受け持っている。

 本間病院は医療法人健友会が運営する民間病院で、1952(昭和27)年から身近な総合病院として医療を提供してきた。病院がある中町エリアはアーケードや飲食店、商店が並ぶ酒田市の中心市街地。ただ郊外に大規模店舗が出店し、空洞化が進んでいた。

 一時は郊外への移転も検討したが、市の再開発に伴い、2004年から病院のそばに介護老人保健施設やマンション、同クリニックなどの入る複合施設が整備された。現在、一帯は医療と福祉の拠点として街の中核としての役割を担う。

 同病院は透析治療の先駆者としての顔も持つ。ただ郊外にある日本海総合病院や隣接する庄内町の徳洲会庄内余目病院でも透析治療は可能。郊外への人の流出が続く中、いずれ患者を奪い合う構図になることも想定された。

 日本海総合病院との連携と役割分担に踏み出したことは、中心市街地に立地する総合病院として運営を継続し、強みを生かし続けるという視点からも大きな意義があった。

透析患者の治療、分担

 酒田市の本間病院の向かいにある「本間なかまちクリニック」の透析室は、70床のベッドと専用の機械を備えている。患者は週3回程度、4時間ほどを過ごし人工透析を受ける。命をつなぐ場所だ。日本海ヘルスケアネットの中で、同病院は患者の情報を日本海総合病院と共有。透析患者の症状や状態に応じ、地域の中で役割分担をしながら治療を行っている。

 両病院は以前から協力関係があったが、透析患者のうち急性期の治療を日本海総合病院、慢性期の維持透析を原則すべて本間病院が受け持つ役割分担は2018年の同ネット発足後に本格化した。

 本間病院は19年12月、同クリニックに70床の透析室を新設。かつて本院にあった49床の透析室に比べ約1.5倍に増床した。連携以前120~130人だった維持透析の患者は170人以上に増えた。

 本間病院を運営する健友会の本間修理事長(67)は「連携する前はそれぞれが透析患者を受け入れていた。患者も高齢化し、地域で患者を取り合うような構図になれば、うちは立ち行かなくなっていたかもしれない」と話す。

 腎疾患では維持透析だけでなく、血管などの外科手術、心臓の疾患などの治療が必要になる場合もある。こうしたケースは日本海総合病院が急性期患者として担当する。症状が安定すれば、再び本間病院での維持透析を受けるという仕組みだ。

 同クリニックの透析患者のうち約80人が入っている患者組織「腎友会」で会長を務める荘司雅紀さん(71)=同市=は維持透析を受けるようになって6年目。50代で患い、元々は日本海総合病院で透析治療を受けていた。症状が安定し、今は同クリニックに通っている。荘司さんは両病院の情報共有の下での治療に「大きな病院と連携した治療をしてくれるのは安心感がある」と患者にとっての利点を指摘する。

 本間病院の維持透析は医療部門の収益の約30%を占める。連携と役割分担によって、透析による収入は19年の6700万円から21年は7300万円に増加し、病院の経営改善にもつながっている。

 本間理事長は「歴史的な成り立ちの異なる医療機関がそれぞれの強みを生かして役割を継続し、協力関係を深めている。街の中心で経営を続けていられるのも、こうした地域医療連携推進法人の枠組みがあるからだと思う」と強調した。

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