第3部・連携実施の先駆け(9) 県境を越えて~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第3部・連携実施の先駆け(9) 県境を越えて

2022/2/8 12:00

 医療機関の連携は「医療情報ネットワーク」によって、円滑かつ強固なつながりを保っている。本県では四つの2次医療圏ごとに整備されており、庄内地域では「ちょうかいネット」を運用している。同地域の連携の輪は県内だけにとどまらない。全国初の県境を越えた広域連携として「秋田・山形つばさネット」の取り組みが2020年から始まっている。

三沢市立三沢病院と地域医療連携推進法人を設立した十和田市立中央病院=青森県十和田市

 酒田市の日本海総合病院には、充実した医療環境が乏しい秋田県南部から、治療や診断、検査のため、患者が訪れるケースが多い。元々受診していた秋田県の医療機関とカルテやレントゲンなどの画像データ、処方薬などの情報を共有できれば、より円滑な対応ができ、患者の負担も軽減できる。

 かつて本県と秋田県などを走っていた特急列車から名称を取り、「秋田・山形つばさネット」が誕生した。県境を越え、中核病院と診療所など地域のかかりつけ医が一体となり、切れ目ない医療を提供する連携態勢が構築されている。

 先進的な協力関係を構築できるのは、北庄内の医療と介護の連携を進める地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」の枠組みがあることも大きい。県境を越えた連携のほかに、「日本の地域医療の理想型」とされる同ネットの取り組みをモデルにした県外の取り組みも動き出している。

 地域医療連携推進法人の全国トップランナーと言われる日本海ヘルスケアネットの背中を追う存在がいる。青森県上十三(かみとおさん)地域で昨年3月に認定された地域医療連携推進法人「上十三まるごとネット」だ。十和田市立中央病院事業管理者を務める丹野弘晃代表理事(67)は「日本海ヘルスケアネットの設立当初から注目し、まねさせてもらっている」と語った。

 同地域は同県東部に位置し、十和田市や三沢市など計8市町村からなる。法人設立のきっかけとなったのは、2016年に策定された青森県地域医療構想。各地域で病院の再編・ネットワーク化の検討が必要と指摘されていた。これを受け、青森地域や津軽地域では統合に向けた議論が進んでいる。

 上十三地域の進む道は―。同地域の人口10万人当たりの医師数は117.5人。全国平均233.6人の約半分で、同県内でも最も少ない。一方、十和田市立中央病院と三沢市立三沢病院という200~300床規模で、建設から10年ほどの病院が併存する。医療人材不足に診療機能の重複、病床再編などの課題がある中で「病院単体での持続的な経営はいずれ難しくなる」(丹野代表理事)。この共通認識の下、たどりついた先が地域医療連携推進法人だった。中央病院が旗振り役となり、三沢病院が参加して法人を設立した。

 まず取り組んだのが、両病院とも力を入れるがん治療での連携。三沢病院が持つ診断機器「PET―CT」で病巣の状況を診て、北東北に1台という中央病院所有の放射線治療装置「トモセラピー ラディザクト」で治療を行っている。いずれは高額医療機器を集約し、地域全体でシェアする仕組みを考えたいという。

 来年度からは人事交流ができるよう、準備を進めている。分娩(ぶんべん)休止中の中央病院に所属する助産師のスキルを維持するため、分娩を取り扱っている三沢病院に1年ほどの期間で派遣する予定。女性の放射線技師が少ない三沢病院には中央病院の女性技師を派遣する。受診者から女性技師が好まれる乳がん検診のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)に対応するためだ。足りない部分を互いに補完していく。

 いずれは同じ医療圏内の他病院にも法人に参加してもらい、取り組みを広げる構想を描いている。日本海ヘルスケアネットが全国初導入した地域内で推奨薬と医薬品の使用指針を決める「地域フォーミュラリ」にも興味を示す。

 ただ、設立からまだ1年足らず。両病院とも新型コロナウイルス感染症の対応に追われる中で、打ち合わせはオンラインに制限される。医療機器の集約や人事交流も取り決めの細部は詰め切れていない。丹野代表理事は「まずは軌道に乗せるための成果がほしい」と語る。追う背中の大きさを感じている。

=第3部おわり

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