第4部・連携の課題と新たな可能性(5) 最後のとりで~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第4部・連携の課題と新たな可能性(5) 最後のとりで

2022/4/24 08:21
地域医療のとりでとなっている西川町立病院(上)と小国町立病院のコラージュ

 「ここがないと町に人が住み続けることが難しくなる」。西川町立、小国町立の両病院関係者は口をそろえる。小規模自治体にとって医療提供態勢の維持は、自治体の存続と密接に関わる重要なテーマだ。

 ともに山あいの集落が多く、町中心部から車で30分以上かかる集落もある。西川町は町内に開業医がなく、町立病院が唯一の医療機関。小国は地域の基幹病院である公立置賜総合病院(川西町)まで町中心部からでも40分を要し、冬期間は幹線道路が通行止めになったら迂回(うかい)路もない。文字通り「地域医療の最後のとりで」だ。

 19床以下の診療所ではなく、「病院」にこだわるのは、町民の生活を守るために一定のマンパワーが必要と考えてきたからだ。ある程度の規模を保っていたからこそ、新型コロナウイルスのワクチン接種にも対応できた。

 一方、人口が減少する中で、いずれの町も単独で町立病院を維持するには、財政、医師や看護師など医療人材確保の両面でハードルが高い。将来の姿を考える必要に迫られつつ、目の前には今日の患者がいる。「目の前のことと10年後の話は一緒にできない。新しい姿にするには政治の力が必要」―。病院関係者は吐露する。地域医療のとりで、ひいては地域自体を守るため、何が必要なのか。

 3月末まで17年、西川町立病院の院長を務めた須貝昌博医師(68)は「赴任した約40年前とは町立病院の担う医療が全く変わった」と話す。当時は入院などが必要な2次医療と救命治療を担う3次医療の中間に当たる医療まで手掛けたが、今は大半が日常的な疾病を対象とする1次医療だ。

 2006年には開業医が姿を消し、町内唯一の医療機関に。13年に内科と外科を統合、全てを診る総合診療科に再編した。より専門的治療ができる町外の病院に紹介するかなど、患者にとってどんな治療が望ましいのかの判断を含め、かかりつけ医としての役割が色濃くなっている。

 重要性を増すのが、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられる「地域包括ケア」の要の役割だ。高齢化率が県内一の同町は地域包括医療ケアに先駆けて取り組み、病院は町内の介護施設入所者の健康管理、在宅医療も担う。須貝前院長は「役割は病気の人を診るだけではない。町の保健や福祉と切り離せず、将来的に基幹病院のサテライトや、慢性疾患の療養型病床などになったとしても、社会的共通資本であるこの病院自体をなくすわけにはいかない」と強調する。

 小規模自治体が単独で病院を維持する際、財政とともにハードルとなるのが医療人材の確保。小国町立病院は看護師確保が難しいとして、4月から平日午後7時以降、休日同5時以降の夜間救急対応を休止した。例えば「急に高熱が出たが、治療すれば数日で収まる」といった軽度急性期の患者に夜間は対応できなくなる。こうした状況を町民はどう受け止めるのか。60代男性は「先を考えると不安。医療がきちんとしていないと人は住まない。町単独が無理なら、広域連合を検討するなど医療の在り方を根本的に考えなければならないのでは」と話す。

 「フル装備の維持は難しいが、地理的状況から、病院の機能は残す必要がある。町として、できることを守る一方で、大きな枠組みも考えなければいけないのだと思う」と舟山重浩事務長(58)。人材確保の面では従来の連携から踏み込み、周辺の基幹病院のサテライトとなることも方策の一つといえる。舟山事務長は「働く側にとっても、急性期から地域包括ケアまで経験できる環境は魅力ではないだろうか」と人材育成面でのメリットも指摘する。

 将来にわたり地域医療のとりでを守るため、必要なことは何か。「西村山」「置賜」などの枠組みでの機能再編は答えになり得る。ただ、それは一朝一夕に進む話ではない。議論のテーブルすら整わない中、小規模自治体の人口減少は加速し、自治体病院が独自でできることが限られていく状況が生まれている。

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