第5部・住み慣れた地で最期まで(2) 地域包括ケア~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第5部・住み慣れた地で最期まで(2) 地域包括ケア

2022/6/6 10:23
病棟ごとに行われる退院支援カンファレンス。患者の状況を共有していく=川西町・公立置賜総合病院(画像の一部を加工しています)

 住み慣れた地域で医療、介護、生活支援サービスなどを切れ目なく受けられる社会へ―。その実現を目指した地域包括ケアシステムの構築は、国が団塊の世代全員が75歳以上となる2025年を見据えて促し、各市町村で進められてきた。高齢化の進展で医療・介護需要がさらに増し、認知症の高齢者を地域で支えていくことが大きな課題となっている。

 地域包括ケアシステムの拠点の一つとして、地域包括支援センターが市町村により設置されている。介護を受ける本人や家族からの相談窓口となり、本人の状況を踏まえて適切な制度や施設を紹介するのが主な役割で、県内では21年度で73カ所に上る。

 一方、医療分野では急性期、回復期病院、かかりつけ医などとの連携が重要だ。急性期を担う病院と、地域の医療機関をつなぐ「地域医療連携室」(地域医療連携センター)が総合病院などに設けられている。看護師や社会福祉士らが患者や家族の相談に対応、安心して治療に専念できる環境を整える。相談内容は今後の生活への不安、職場復帰、家での介護など多岐にわたる。

 公立置賜総合病院(川西町)の医療連携・相談室では担当者が日々、外部の機関とやりとりし、患者の退院や転院をサポートする。リハビリや施設入所の調整が必要な患者は、地域の慢性期病院に転院することが多い。双方の病院の相談室間で情報共有の形式はできあがっているが、気になる患者には、さらに一言書き加えたり、口頭で伝えたりを欠かさない。自宅で医療、介護を受ける患者には、さらに多くの職種が関わってくる。

 置賜全域をカバーする同病院には、医療機関、訪問看護ステーション、介護事業所など200近い連携先がある。患者や家族のニーズを酌み、迅速に対応できるよう気を配っているのが「顔の見える関係づくり」だ。だからこそ「こういうケースはここの事業所、施設」とすぐに頭に浮かぶ。

 「この患者さんは3日に退院の予定です。ご家族構成は…」。5月末の昼、公立置賜総合病院(川西町)ではナースステーションに病棟の看護師や、退院支援に当たる医療連携・相談室の看護師、社会福祉士らが集まっていた。複数の入院患者の症状や治療の方向性、家族構成などの背景を共有していく。病棟ごとに週2、3回行われる「退院支援カンファレンス(会議)」の一コマだ。

 同病院のような急性期病院の入院患者の多くは2週間程度で、自宅に帰るか慢性期病院に転院するか、といった方向が決まる。冒頭のような会議は日々、いずれかの病棟で行われている。病床数496の同病院では、入院患者の9割超にこうした退院支援を行う。

 ケアマネジャー、訪問看護など新たな支援が必要になった患者には、家族、在宅での医療・介護に関わる多職種の関係者が顔を合わせて情報共有する「退院調整会議」が欠かせない。こちらは月に20件ほどを対象に開かれ、1人につき複数回会議を重ねることも。補助がないと、歩行が難しくなった患者のケースでは、ケアマネジャーと福祉用具を取り扱う事業所の担当者が、事前に自宅の廊下の幅やトイレまでの距離などを把握した上で「手すりが必要」と話し合った。

 「自宅で過ごしたい」と希望する終末期のがん患者の支援も年に数件ある。家族が不安を感じている場合は一緒になって何が不安かを突き止め、一つずつ解決する。医療連携・相談室のスタッフは最期まで過ごせたとの報告を受け、訪問看護師、往診の医師の力の大きさを感じることもある。「『餅は餅屋』じゃないけど、関わる職種それぞれが患者さんのために自分のすべきことを行い、調整していく」。医療連携・相談室看護師長の伊藤裕美さんらは地域の多職種が連携する現場をこう表現する。

 最近気がかりなのは独居高齢者や老老介護など孤立しがちな世帯の増加だ。元気で生活していて各種の支援を受けていなかった高齢者が急な体調の悪化をきっかけに、周囲にサポートする家族らがいないという問題に直面する。「医療行為への同意や入院、退院の手続きを誰がするか」という倫理上、事務上の課題もある。高齢化が進み、こうしたケースへの支援は増えていくだろう。本人や周囲が元気なうちから体調が悪くなったらどうしたら良いか考え、医療や介護などのケアをする側が情報共有できるような仕組みも必要だ。「行政、地域包括支援センターなどとの連携はより重要になる」と、退院支援を担当する社会福祉士は考えている。

 日々の業務から、地域が抱えるさまざまな課題が見えてきている。

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