第5部・住み慣れた地で最期まで(3) 在宅医療、認知症を支える~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第5部・住み慣れた地で最期まで(3) 在宅医療、認知症を支える

2022/6/7 14:11
早期に精神科診療が入るようになったことで患者の回復が早くなったと語る小林和人山容病院院長=酒田市・同病院

 医療資源が限られる中で高齢化が進み、在宅医療をどう支えるかが重要な課題になっている。酒田市の日本海総合病院を核にした地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネット(栗谷義樹代表理事)は在宅医療の充実のため、訪問看護ステーションの統合を進めている。同ネットを構成する医療法人のうち、4団体が酒田市内でそれぞれ運営していたステーションを2カ所に集約した。

 看護人材不足が深刻な状況で夜間・休日なども抜け目なく訪問看護に対応するには、拠点を集約して人員を充実させる必要があったからだ。効率化で経営が安定すれば、持続可能な体制にもつながっていく。

 第一歩として2019年6月、上田診療所や介護老人保健施設うららなどを運営する宏友会のステーションを、日本海総合病院などを運営する県・酒田市病院機構の日本海八幡クリニックに集約。20年4月には酒田地区医師会十全堂のステーションを、本間病院を運営する健友会にまとめた。

 今後どこまで、どう集約するかを検討する必要がある。拠点となる日本海総合病院に人員を集め対応力を強くするか、地域とのつながりも考慮し、現状を維持するかが焦点となる。

 増え続ける認知症患者を地域でどう支えるかも大きな課題。同ネットには認知症対応で力を発揮する精神科専門病院が参加している。全国の地域医療連携推進法人で初の例だ。認知症病床60床を持つ山容会・山容病院(同市)。従来から多くの病院、開業医、介護施設からの相談、入院要請に応えてきたが、同ネット発足後、より踏み込んだ連携が可能になった。

 地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」に精神科専門の山容病院が参加したことで進んだ連携の代表格が、同ネットの中核・日本海総合病院(酒田市)の“後方支援病院”として慢性期患者を受け入れてきた市内の本間病院との連携だ。同ネット発足後間もなくから山容病院の精神科医が月1回程度本間病院に出向き、専門医の視点で診療している。

 入院患者の中には、認知症、うつ病のほか、認知機能が低下して幻覚・妄想などにとらわれる「せん妄」を抱えている患者が多く、身体疾患に特化した病院では診断や治療が難しいという。認知症でも、アルツハイマー型と前頭側頭型では看護の仕方も異なる。

 山容病院には認知症の知識と対応経験が豊富な医師と看護師がそろう。懐かしい音楽や映画に触れたり、工作したりと、レクリエーションを通じて脳に刺激を与える環境も整う。早期に精神科の診断、治療ができるようになった結果、患者の回復が早まっているという。

 さらに、日本海総合病院から本間病院に移った患者が精神疾患の症状の方が強かった時は山容病院へ、日本海総合病院から山容病院に移った患者が身体疾患の症状の方が強かった時は本間病院へと、仕切り直しの移動が容易になったのも、日本海ネット発足後だという。「患者が過ごす環境込みで対応しないと治療が難しいケースもある。こっちの方が早く治ると遠慮せず言えるのも、顔が見える関係で信頼関係があるから」と小林和人山容病院院長(47)は言う。

 精神科との連携は早期回復という患者のメリットだけでなく、本間病院からの退院が早まることで日本海総合病院の急性期機能を支えることにもつながっている。

 認知症への対応は、かかりつけ医となる開業医の役割も重要だ。開業医の中には専門的な医療機関への案内役やパイプ役となる「認知症サポート医」がおり、今後より専門性を高めることなどが求められている。

 酒田地区医師会十全堂の佐藤顕会長(58)は、山容病院との「顔の見える」連携は同医師会にとって心強いと話す。「精神科の領域は専門性が高く、これまでは交わることが少なかった。相談や役割分担、連携がしやすくなり、介護や福祉の分野を含めて地域全体で認知症患者を支える体制の構築に向けて環境が整いつつある」と続けた。

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