第6部・未来を見据え(3) さまざまな連携の形~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第6部・未来を見据え(3) さまざまな連携の形

2022/6/20 10:05

 先駆的な取り組みは各地にある。どの病棟に空きベッドがあり、安全な受け入れができるのか、いつ、どこに患者を移すのか―。多くの病院が頭を悩ませているこの問題を瞬時に調整できるシステムを、滋賀県の地域医療連携推進法人「湖南メディカル・コンソーシアム」が運用している。3病院、1介護施設のベッドコントロールを行う「コマンドセンター」に、全国から視察が相次ぐ。

 従来は午前0時時点の情報を基に、各施設が電話やファクスでやりとりしていた。状況は刻々と変わり、さらに毎日数十件の救急搬送を受け入れる中で、調整作業は大きな負担だった。それがシステム導入以降は10分おきに最新データに更新され、瞬時に受け入れ可能な場所が分かる。

 また、従来は、どの病棟に何人が配置されているかスタッフを数で把握していたが、今はチームごとに力量を点数化して把握し、受け入れの判断に生かす。ベテランぞろいの方がこなせる業務量が多く、安全性も高いからだ。この仕組みにより、余裕がある病棟から忙しい病棟に応援を回すのも容易になり、スタッフの残業時間が削減された。「空きベッドを無駄なく稼働できるだけではない。働き方改革で大きな力を発揮している」と同コンソーシアム事務局は胸を張る。

 同コンソーシアムには先月末現在で病院、診療所、特別養護老人施設、訪問看護サービス事業者など31法人99施設が参加する。本部に職員20人超を配置し、希望する参加法人の施設・車両管理や給与計算、備品購入などの業務を受託する。業務が効率化され、参加法人は医療、福祉の本業に注力できるようになった。業務ごとに委託するか決められる点も利点になっている。

 次はセントラルキッチンの稼働を目指す。病院食調理は個々の法人では必ず赤字になるといい、4法人で1日9千食から始める予定だ。こうした改革もデジタルの力で可能になった。

多様なアクセスの向上が重要だ

 医療・介護施設の連携の形はさまざまで地域医療連携推進法人はその一つだ。県内では庄内に11法人が参加する日本海ヘルスケアネットがあるほか、米沢市立、三友堂の両病院で、新病院が開院する来年秋までの設立を目指す。その「福祉版」として山形、酒田、長井各市などで特別養護老人ホームや老人保健施設などを運営する4法人が、本県初の社会福祉連携推進法人を来年4月に設立すべく、準備を進める。

 福祉版の最大の狙いは、地域内で限られた人材・資金・医療資機材を効率よく活用し、介護福祉サービスを持続的に提供していくこと。物品の共同購入などによる経営改善のほか、人材の確保・育成にも協力して取り組む方針。今年10月をめどに共同出資して一般社団法人を立ち上げ、来年4月の社会福祉連携推進法人設立時には10法人程度に増える見通しだ。地域福祉を支え合う取り組みとして期待される。

 医療介護供給体制の再構築を考える上で「アクセス向上」が鍵になる。すぐに思い浮かぶ交通アクセスでは、県内は東北中央自動車道の整備がようやく進み、置賜方面から山形大医学部付属病院に、最上方面から県立中央病院に、といった移動が以前より便利になった。年内には未接続区間の東根北―村山本飯田間(8.9キロ)が開通し、患者の選択肢は広がる。県保健医療計画によると、最上地域には心臓外科の専門医療機関がないなど、地域内で対応し切れない疾患もあり、緊急度の高い患者の搬送時間が短縮される道路は、命をつなぐ道になる。

 日本海ヘルスケアネットの栗谷義樹代表理事(75)は「多様な視点でアクセスを向上させる必要がある」と指摘する。例えば患者の医療機関への移動手段。既存の路線・循環バスよりはデマンドタクシーのような、もっと個別の利便性に応える新しい配車・交通システムが必要と話す。買い物や趣味の活動、行政サービスの利用もしやすくなる。

 遠隔診療や訪問看護のほか、救急車を呼ぶほどではないが、心配な症状の時に主治医にタブレット端末で相談できる仕組みなど、多様な手段で医療にアクセスしやすくなれば、高齢化の中でも定住圏を維持していける。「医療情報の共有もそうだが、キーワードはつながること。地域の総合力が試されている」と栗谷代表理事は言う。地域づくりを俯瞰(ふかん)した、広い視野が必要だ。

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