第6部・未来を見据え(4) 人材確保~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第6部・未来を見据え(4) 人材確保

2022/6/21 15:07

 多くの医療関係者が最大の課題として挙げた人材不足。中目千之(なかのめちゆき)県医師会長(74)は医師確保の面で、山形大医学部の先進的ながん治療や、同医学部東日本重粒子センターの治療に「若手医師が県内に来る、とどまる魅力になる」と期待を寄せる。医師の研究心・知的欲求に応える高度先進医療に取り組める地域であることが必要と考えるからだ。「その上で地域医療にも目を向けてもらう環境、機会づくりが重要」と語る。

 地域医療を支えてきた開業医の高齢化で継承問題が深刻になっているとも指摘した。都市部への偏在も課題で、過疎地域ほど後継者を見つけるのが難しいという。「開業には億単位の初期投資がかかるため、後継者が欲しい医師と開業したい医師とを、ゆかりがなくてもマッチングできる仕組みがあれば、偏在解消にもつながる」と提案する。

 県内の医師は30代より60代が多く、高齢化する現状を県は懸念する。同医学部開設直後に卒業し、県内医療を支えてきた年代が、続々と65歳に達している。阿彦忠之県医療統括監(64)は「65歳を過ぎても、活躍してもらえる環境を整備しなければならない」と話す。

 山形大大学院医学系研究科の村上正泰教授(47)は「それぞれの医師が思い描くキャリアを構築できる病院づくりを地域全体で進めることも必要だが、暮らしを含め、地域の魅力を高めることが重要」とまちづくりにも目を向ける。

 不足する看護師にも同じことがいえる。育成機関があっても定員割れし、管内で一定期間勤務すれば返還しなくていい奨学金制度があっても利用が伸びない。それも地域として選ばれていないからではないか。「来たい、住みたい」と思われる地域づくりが必要だ。

 持続可能な地域医療の供給体制を構築するため、何が必要なのか、直面する課題は何か。本県を代表する医療人に尋ねた。

かかりつけ医と積極連携

上野義之山形大医学部長

 上野義之山形大医学部長(61)

 ―山形大医学部は県内唯一の医師養成機関で、付属病院は先進、高度医療を提供する「とりで」だ。取り巻く環境の変化にどう対応するか。

 上野 来年設立50周年を迎える。卒業生が本県に一定の割合で残っており、医学部としての使命を果たせていると思う。人口動態や社会情勢の変化で疾患構造、求められる医療の中身も変わってきた。例えば重粒子線がん治療は高齢者でも体に優しい治療となり、こうした時代に即した医療を提供していくことが重要だ。医療は専門化しつつある。地域で医療の役割分担が必要で、実質的な調整、協議が今後求められる。住民の不安解消のため、どの地域に住んでいても、しっかりとした医療が受けられる体制づくりが急務。次世代のため住民、自治体と話し合い、持続可能な医療システム構築に貢献したい。

 ―住民に身近な開業医、クリニックとの連携も一層求められる。

 上野 より開かれた大学病院として、地域のかかりつけ医との連携を進める。それぞれの医療機関の役割に応じて、患者の紹介などをより円滑にできるよう検討する必要がある。感染症対策の面からも、できるだけ人の移動を伴わないよう、デジタル技術の活用が重要となる。開業医との連携では、関節リウマチ診療で山形大を中心とした病院と開業医をつなぐネットワークなどが既にある。山形大は限られた医療資源を有効に使い、医療の質を落とさないよう貢献する。また、住民の協力を得て、病気発症の遺伝的要素と生活習慣の関係を解明する「コホート研究」に長年にわたり取り組んできた。この成果を県民の健康づくりのため、地域住民に積極的に提供していく。

医師と県職員意見交わす

中目千之県医師会会長(74)

 中目千之県医師会会長(74)

 ―医療現場の声を行政施策に反映するための取り組みは。

 中目 2019年12月、「医療・保健供給体制等の確保に向けた協定」を県と締結した。協定に基づき、地域課題を解決する効果的な施策を展開するため、20年2月に両者で初の会議を開催した。同協定の項目ごとに医師と県職員とがグループになり、顔の見える関係で意見を交換した。勤務希望の医師に医療機関を紹介するドクターバンクの運営や、県民の健康づくり推進、認知症への対応強化などについて、具体策をともに練り上げた。今年8月にも開催予定だ。より現状に沿った施策展開につながると思う。

 ―協定に盛り込まれた、日常的にたんの吸引や人工呼吸器が必要な「医療的ケア児」の支援について、具体的にどう協力するか。

 中目 診療は基幹病院の病院主治医に加え、身近なかかりつけ医が在宅主治医として支えており、在宅主治医を選任する役割は県医師会が果たしている。各医師の得意分野や在宅医療への取り組み状況を把握しているからこそできる。間もなく、山形大医学部付属病院に医療的ケア児の支援センターが開設され、徐々に機能が移るだろうが、在宅主治医選任は継続していくだろう。主治医と保護者、学校など関係者間でのタブレット端末を使った情報共有も続けている。

 【メモ】 厚生労働省によると、医療施設で働く医師数は全国で増加している。2020年と10年を比較すると本県は37人増加したが増加率は全国最下位。人口減少もあって住民10万人当たりの医師数は増えたが、全国平均を下回る状況が続く。24年度からは医師の働き方改革で勤務医の時間外労働の上限が適用されるため、医師確保の重要性が増す。

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