並行在来線(3) 北海道新幹線(下)~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

並行在来線(3) 北海道新幹線(下)

2017/4/2 10:00
観光客らでにぎわう「函館朝市」。新幹線整備は並行在来線の問題とともに、自治体間で生じる波及効果の差にも留意する必要がある=3月28日、北海道函館市

 東北新幹線と結ばれ、2016年3月に新函館北斗駅が誕生した北海道新幹線。鉄道の高速交通網はさらに北へと向かい、30年度までの札幌延伸が計画されている。新函館北斗―札幌間の開業とともに、函館線の函館―小樽間(延長252.5キロ)は並行在来線として経営分離される。道は沿線15市町とともに12年、「北海道新幹線並行在来線対策協議会」を組織。25年までに結論を得たいとしているが、急速な人口減少が地域の将来像を不透明にしている。

 旧国鉄が1987(昭和62)年に民営・分社化されて30年。JR北海道の経営状況は他6社と比べて厳しい。山形新幹線などを運行するJR東日本の2016年3月期連結決算の営業利益4878億円に対し、JR北海道は352億円の営業損失を計上。同年11月に10路線13区間(約1200キロ)の単独維持は困難として、廃止や費用負担などの協議を地元に求めた。

 北海道新幹線整備に伴い、JR北海道は江差線の五稜郭(ごりょうかく)―木古内間(37.8キロ)の経営を分離。第三セクター「道南いさりび鉄道」が運営を引き継いだ。沿線自治体は経営分離される函館―小樽間の存続か、廃止かの決断を迫られるが、延伸まで残り14年という時間軸が障壁となり、担当者からは「10年以上経過すれば、今とは人口動態も変わってくる」との言葉が漏れる。実効性のある議論を早期に進めることの難しさが、垣間見える。

 北海道新幹線開業から1年。JR函館駅前の「函館朝市」は平日にも関わらず、観光客らでにぎわいを見せた。カニやイカなどの新鮮な魚介類を品定めし、買い求める人の波。アジア系外国人の姿も目立ち、インバウンド(海外からの旅行)誘致も好調な様子だ。

 北海道新幹線が函館市に及ぼした影響は大きい。年度別観光客数の過去最多は1998年度の539万2千人だが、2016年度は上半期で360万人を突破。最終的には過去最多を更新する見通しだ。函館市は特別史跡・五稜郭跡や知名度の高い夜景など、アピール力のある観光資源が多い。主要観光施設の昨年4月~今年1月の入場者数は五稜郭タワーが前年同期比32.8%増、「函館山ロープウェイ」が11.3%増と好調ぶりを示す。

 市政策推進課は、札幌延伸で「空路との組み合わせなどで、これまで以上に来訪者が増える」とし、観光振興に加え、ビジネス需要に期待をにじませる。道新幹線推進室も、現状で約3時間半の函館―札幌間の所要時間が2時間以上短縮される利点を強調し「新幹線の本領を発揮し、ライフスタイルが変わる可能性を秘めている」と話す。

 こうした華やかさの裏側で、波及効果の自治体間格差や並行在来線の利便性低下に悩む住民の声も上がっている。函館市に隣接し、新函館北斗駅のある北斗市が昨年12月に実施した市民アンケートによると、北海道新幹線開業による変化について「何も変わらない」との回答が62.7%で最多となり、「変化を感じた」が20%にとどまった。東北が身近になったとの見方がある半面、並行在来線の運賃増など、マイナス面の指摘もあった。

 インバウンドを含めた交流人口の拡大を図る上で、大量輸送を可能にするフル規格新幹線は大きなツールとなる。そこには、在来線の存廃論という新たな課題を伴う。奥羽、羽越両新幹線のフル規格整備を実現させるには、圏域が広く、人口減少が深刻化する本県などの東北地方も、北海道と同様の課題に直面するだろう。沿線自治体の連携と協働で、先行き不透明な中に針路を見いだす努力が不可欠だ。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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