トンネル化への道(下) 地元の機運醸成が鍵~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

トンネル化への道(下) 地元の機運醸成が鍵

2017/12/20 09:09

 山形新幹線の福島県境部の抜本的な防災対策に関し、JR東日本の調査結果が先月29日、県に伝わった。トンネル新設(延長23キロ)の概算事業費1500億円、吉村美栄子知事が要請していた将来のフル規格新幹線に対応可能なトンネル断面に広げる場合、120億円程度が加算との概要だった。2日後、吉村知事は東京のJR東日本本社で冨田哲郎社長と面談し、早期事業化を要請した。

 JR東日本は調査結果が出た段階で、事業化は今後の検討としている。財源確保などとともに、重要になるのは地元の熱意だ。山形新幹線の開業と新庄延伸、東北中央自動車道の福島県境部開通などは、必要性を訴える県民の声が大きく、高くなって大きなうねりを生み、実現させてきた。

 雪で止まる、雨で遅れる、動物とぶつかる…。運休・遅延全体の約4割が集中する福島県境部がこのままでいいのか。豪雨の影響で3日間運休した2015年9月のような機能不全が今後も繰り返されるのか。吉村知事は今月8日の県議会本会議で「山形の総力を結集し、早期実現に全力で取り組む」と強調した。

結束をアピールした県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟の促進大会。県民の熱意が山形新幹線のトンネル事業化にもつながる=今年8月、山形市

 福島県境部の安定性、安全性が飛躍的に高まるトンネル新設の事業化に向け、フル規格新幹線の整備促進組織が旗手役を担う。基本計画から整備計画への格上げなど、フル規格実現の道は一足飛びにはいかない。将来的な目標を定めつつ、喫緊の課題となっている山形新幹線の機能強化は必須だ。

 吉村美栄子知事は今月の県議会本会議で、JR東日本の調査概要を概算事業費1500億円、将来のフル規格仕様にトンネル断面を広げれば120億円増、工期は15年間と説明。JR東日本の冨田哲郎社長に対し「将来を見据えたトンネル整備、財源枠組みについて、県との協議を要請した。協議することに理解を示してもらった」と述べた。奥羽、羽越両新幹線に関しては「県内機運は着実に高まっている。県民理解の促進、機運醸成を図り、重層的に取り組む」とも語った。

 奥羽、羽越両新幹線の整備促進を目指す機運は昨年度から熱を帯び始めた。県や県議会、市町村、経済団体などオール山形の「県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟」が昨年5月に設立。呼応する形で翌月に米沢市で同盟組織が誕生し、同年11月に庄内地区、今年9月に最上地区と地域単位の組織が発足した。

 県内4ブロックで空白地域となっている村山地域に関し、東南村山地域の経済人でつくる発起人会は先月、佐藤孝弘山形市長に「米沢、新庄と一体になって、実現に向けて協力を願う」などと組織結成を要請した。佐藤市長は「最大限協力する」と応え、山形市は発足準備に入っている。

 フル規格の奥羽、羽越両新幹線に対する県外理解も広がりを見せている。山形、福島、新潟3県知事会議や北海道東北地方知事会議で、今や整備促進は共通認識だ。奥羽、羽越両新幹線と同じく1973(昭和48)年に基本計画に位置付けられた四国、四国横断両新幹線の整備促進組織の千葉昭会長は、本県などとの連携で「整備計画」に格上げするうねりを加速させる構想を明らかにしている。

 県全体の同盟組織と住民に身近な地域組織が連動することで、県民運動の輪がより広がっていく。山形新幹線の福島県境部のトンネル新設、奥羽、羽越両新幹線の整備促進は、疲弊する古里を高速交通網の整備効果で再生し、県民一人一人が将来像を描くことにつながる。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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