やまがた農新時代

>>山形新聞トップ >>やまがた農新時代 >>第4部・6次産業化(3) 新田営農組合(米沢市)

やまがた農新時代

第4部・6次産業化(3) 新田営農組合(米沢市)

2014/7/22 09:58
大型乾燥機にキクラゲのトレーを運び入れる女性従業員。経営安定を目指し加工業務に力を入れる=米沢市・新田ファーマーズマーケット

 1枚ずつ平たく広げたキクラゲを敷き詰めたトレーを、女性従業員が大型乾燥機に入れていく。約45度の設定温度で、1日から2日間かけて乾燥させる。長期間の保存が可能になり、必要な時においしさを再現できる加工技術。国の補助金を受け、この設備を導入した米沢市上新田の新田営農組合は、地元農家に依頼され、相場の4分の1程度の使用料で加工を請け負う。

■加工所を併設

 組合は地元農家10人で構成。2012年夏、直売加工所「新田ファーマーズマーケット」をオープンさせた。転作田を団地化し大豆、枝豆の生産に取り組んできたが、収益が上がらない現状を打開するきっかけとして直売加工所の経営に乗り出した。代表理事に就く手塚隆さん(58)は「この施設を地域農業の核にしたい」と言葉に力を込めた。

 直売加工所の立ち上げには、国の6次産業化推進整備事業を活用した。国の補助率は2分の1で、総事業費は約3300万円。木造平屋の施設に、直売所のスペースに加え、乾燥機、製粉機を置く加工所を併設したのが特徴だ。

■消費動向探る

 組合が直売所、加工所それぞれに思い描くイメージがある。直売所は、組合員が手掛けた加工品を販売し、地元農家の生鮮野菜を陳列するだけでなく、接客を通して消費者の反応、ニーズをつかむアンテナショップとしての役割。一方、加工所は組合員が栽培した大豆、枝豆、コメ、各種野菜などをペースト、粉末化することで用途を広げ、菓子メーカー、レストランなどへの販売を見据える。

 オープンから2年が経過。直売所の認知度は高まり、徐々に固定客が見られるようになった。それでも、手塚さんは「直売所の売り上げはたかが知れている」と言い切る。農家の経営安定を図る上で、加工部門の販路開拓の必要性を感じているからだ。転作の主力作物である枝豆は、規格外品が半数近くに上るシーズンがある。減収を避けるため、味に問題がない枝豆を加工することで菓子などへの活用を模索する。

■異業種交流

 販路の足掛かりとするため、組合は地元菓子店、農機具店、建設業者などと異業種交流を図る「NIDA協同組合」を直売加工所整備前の10年に組織した。組合を通じて、粉末にした枝豆を使った洋菓子を販売する動きはあるが、大口取引を可能にするにはまだまだ課題があるという。「試行錯誤の連続だが、商品価値はある。無駄をなくす上でも意義がある取り組み」と手塚さんは前を向く。

 新田ファーマーズマーケットはJR置賜駅に程近い。施設裏手からは田園地帯を走る山形新幹線つばさを望むことができる、のどかな集落に位置する。しかし手塚さんはつぶやく。「集落全体の高齢化が予想以上に進んでいる。田畑の管理を頼まれる機会が年々増えた」。施設向かいの大きな屋敷に視線を送り「空き家になって何年になるか。農地を守り、地域の担い手となる存在が必要」とこぼす。「地域農業の核にしたい」―。繰り返したその言葉に強い使命感を見た。

(「やまがた農新時代」取材班)

[PR]
やまがた農新時代
[PR]