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第5部・飼料用米の可能性(7) 様子見の生産者

2014/9/27 11:50
今年備蓄米として出荷する「はえぬき」の稲刈りを行う江目一広さん。「今後の状況を見極め、飼料用米や加工用米を作ることも考えたい」と話す=河北町

 国内には、配合飼料の主原料として毎年1千万トンのトウモロコシが輸入されている。国は450万トンを飼料用米で代替できる潜在需要があるとし、コメ政策の見直しで転作を促す。県は当初、県内の14年産飼料用米作付面積が13年の1700ヘクタールから約3千ヘクタールまで拡大すると見込んでいた。しかし、実際は約2千ヘクタールにとどまった。

■数量払いに

 飼料用米の転作補助金が作付面積に応じた定額制(10アール当たり8万円)から収量で変動する数量払い(10アール当たり5万5千~10万5千円)に変更され、従来の収量では補助金が下がる場合もある。飼料米価格は1キロ当たり5~50円と安く、主食用米価格に近い加工用米(転作補助金は10アール当たり2万円)に流れた可能性を県は指摘し「様子見している農家が多いのではないか」とする。

 西村山地方では加工用米の栽培面積が今年6月現在で13年の3倍近い約62ヘクタールまで急増。JAさがえ西村山は、寒河江市内の米菓製造メーカーが地元産原料にこだわった製品作りに力を入れ、供給量が増えたことや、今年から3年間契約した場合、10アールあたり1万2千円の追加交付が受けられるようになるなど制度が充実したことが要因とみている。

 生産調整(減反)分で備蓄用米を栽培している河北町の稲作農家江目(ごうのめ)一広さん(63)=溝延=は「来年以降、より条件の良い飼料用米や加工用米に変えることも視野に考えたい」と語る。

 08年から減反分で飼料用米の「はえぬき」を栽培出荷したが、12年からは主食用米に近い価格水準の備蓄米に切り替えた。備蓄米はコメ不足に備え、政府が全国の卸業者らから一定量を買い入れ、保管している。入札は1月から行われるため、事前に販売価格が決められる利点がある。12年産は60キロ当たり約1万3千円の高値を付けたものの価格は毎年変わる。主食用米の概算金と同様、備蓄用米も大幅下落する可能性はある。「この先、何を作付けすべきなのか判断できない時代になってしまった」と不安を隠さない。

■肥育数の減少

 稲作農家と畜産農家の結び付きがあっても、飼料用米の面積が縮小したケースも。河北町内でJAさがえ西村山のブランド牛「もち米牛」に与えるもち米を栽培している河北飼料用米生産組合長の真木孝佳さん(67)=田井=は、年々増やしてきた作付面積を今年初めて減らさざるを得なかった。

 子牛価格の高騰で、町内の肥育頭数が少なくなったためだ。同町の飼料用米の今年の作付面積は昨年比3割減の15ヘクタール。営農を諦める農家の田を引き受ける形で面積を増やしてきた真木さんは「いくら作っても足りないと言われ、飼料用米を植えてきた。海外から安い牛肉が入り、国内の畜産業界が厳しい状態に置かれている中、飼料用米を増やす状況ではなくなった」と漏らす。

■5円でも高く

 農家の口から出るのは「今後どうしたら良いのか分からない」という言葉。加工用米も全国的に作付けが増え、供給過剰が予想される。江目さんは「来年は今年以上にコメの価格が下がるだろうが、5円でも10円でも高く売りたい。収入を確保するためにはいろいろな情報を集めながら、これからの道を探るしかない」と遠くを見詰めた。(「やまがた農新時代」取材班)

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