2014年に就任した東北公益文科大の吉村昇学長はグローバル人材の育成に向け、4学期制(クオーター制)を導入するなど大学改革を進めてきた。研究レベルを上げて大学の魅力を高めるとともに、「教育の質保証」に力を注いで社会に求められる人材を送り出し、地域に貢献する姿勢を鮮明にする。
―4学期制の成果をどう見ているか。
「現在は7割程度の科目を4学期制にしている。従来の2学期制(セメスター制)から4学期制にすることで、留学や長期のインターンシップがしやすくなった。2学期制では学期途中に学外の体験活動をすることは難しく、留学などは夏休みや春休みを使うので期間が限られていた。4学期制にしたことで第2クオーターと夏休みで最長3カ月を取ることができるようになった。そうした学修経験は卒業単位に参入される。4週間程度の短期留学をした学生が、2~4カ月の中期あるいは4カ月以上の長期留学をする例もある。インターンシップも国の省庁で1カ月経験し、地元で公務員になった人もいる」
―グローバルな人材育成に力を入れている。どのように進めていくのか。
「大学づくりの信念として多国籍集団でなければいけないということがある。外国人の留学生が教室にいて、いろいろな言語が飛び交い、学び合い、触れ合うキャンパスづくりが大学のステータスにもつながる。海外から公益大に来る留学生を増やしたい。連携協定を結ぶ海外の大学は現在、中国、米国、英国などに8校あり留学などに生かしている。これを10校に増やす目標を掲げているが、既に2校と協議しており達成できそうだ。公益大の学生が短期、中期、長期の留学をする数は順調に増えている。海外インターンシップも含めて伸ばしたい」
―留学生の受け入れについて本県の現状をどう受け止めているのか。
「独立行政法人日本学生支援機構が調査した2017年度の都道府県別の外国人留学生の在籍状況を見ると、山形県は265人で東北地方で最も少ない。宮城県が3975人と飛び抜けて多いが、福島県(725人)や秋田県(431人)にも差をつけられている。酒田には港があり、外国クルーズ船の寄港が相次ぐなどグローバル都市として発展する可能性がある。海外展開できるビジネスマンを育てる一方、外国からの留学生を増やし、できるだけ地元企業に残ってもらいたいと考えている」
―大学の存在自体が地方創生であり、経営面でも学生数の確保は重要だ。公益大の学部入学者数はここ数年増え続け、今春は定員の245人を超えて251人となった。学生にとって大学の魅力とは何か。
「入学者数は地方の私大としては健闘していて知名度も高まってきた。この人から教わりたいという教員がいることが大学の魅力であり、研究レベルを高めていかなければならない。ここで勉強したい学生を増やすことが大切だ。同時に教育全体の魅力アップが必要で、留学しやすい環境づくりもその一つ。関心のある学生がやる気を持つ仕組みが欠かせない。地元で就職しやすいことも大きなポイントになる」
―今春就職した学生の出身地を見ると県内は72.6%で、就職先は県内が50.8%。山形大などに比べ県内就職率は高いが、それでも県外に出る学生は多い。
「学んだことを生かす就職先が少ないという悩みはどの地方にもある。大学としては目的意識のある学生をしっかり育てるシステムを確立し、地域に貢献していきたい。人材育成機能の強化を目的にした文部科学省の大学教育再生加速プログラムの採択を受け、『教育の質保証』に力を注いでいる。卒業までに学力がどれだけ伸びたか、どんなことにトライしたかを客観的に評価する仕組みを構築し、社会に求められる人材を送り出していく」