異変-生態系クライシス

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第3部・外来生物(4) オオハンゴンソウ

2023/5/29 11:00

 西川町の大井沢温泉「湯ったり館」から、深緑に包まれた山あいを車で走ること約40分。朝日町の朝日鉱泉に通じる山道脇で27日、特定外来生物「オオハンゴンソウ」の除草が行われた。「毎年抜いても生えてくるんだ」。朝日庄内森林生態系保全センターの中嶋一所長は作業の手を止め、こう話した。

 北米原産で多年草のオオハンゴンソウは繁殖力が強く、爆発的に増え始めると、抜いてもすぐに生えてくるという。遠く人里離れた山中にも外来植物は侵入し、地域の多様性を脅かしつつある。この日は、1時間以上作業し、大きなポリ袋約6袋分を掘り取った。

 除草を行った場所は、動植物の保全などを目的に国が設定した「朝日山地森林生態系保護地域」の中。懸命な防除活動で、拡大を防ぎ、生態系に大きな影響が出ないようにしているのが現状だ。

除草作業に汗を流す参加者=朝日町

 オオハンゴンソウは明治初期に観賞用として国内に持ち込まれた。県内でも各地で見つかっており、朝日山地では2017年8月に朝日庄内森林生態系保全センターの職員が生育を確認した。種子が風に飛ばされるなどして侵入した可能性があるという。

 種子や根から増えるのが特徴で、種子は地面に落ちた後も数年間は発芽能力がある。また、根の一部が地中に残っていると、再び新たな芽が出てくるのが厄介で、文字通り根絶させなければ、完全に取り除くのは難しい。除草剤は有効だが、朝日山地では環境に配慮するため使えず、人手で防除するしかない。

 27日の除草作業には同センターのほか、県山岳連盟や県渓流釣り協議会などから9人が参加した。以前は開花期の7~8月に行っていたが、成長した根を掘り出すのが大変なため、今は株が小さい間に除去している。

 この時期はヨモギと見た目が似ている。葉の裏の色合いで見分ける。全体的に白色ならヨモギ、光沢があればオオハンゴンソウだ。20~30センチの株がヨモギなどに紛れて根付いており、スコップ片手に葉の裏を確認する。見つけたら周辺の土ごと掘り起こす。実際に掘ると、太い根が深く伸びていた。地中に残さないようにするのは、ひと苦労だ。

朝日山地に侵入し、生態系への影響が懸念されるオオハンゴンソウ

 毎年同じ場所で除草しても、再び生えてくる「いたちごっこ」の状態。だが、参加して4年目の鈴木正同協議会長は「以前よりはだいぶ減った。少しずつ変わってきている」と、明るい兆しを感じ取る。同センターの中嶋一所長は「外来生物の駆除は気長に続けるしかない。朝日山地に被害が及ばないように作業を続ける」と力を込めた。

 生態系の保全に特効薬はない。地道な努力が生物の多様性を守ることにつながる。そのためには、環境保護の担い手を増やし、今以上に活動の輪を広げる必要がある。

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