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第3部・外来生物(7) アレチウリ

2023/6/1 13:00
三川町の青龍寺川沿いに繁殖したアレチウリを除去する関係者=2017年7月(NPO法人ゆきやなぎ提供)

 「アレチウリ」と聞いて、姿を思い浮かべることができる人はどれだけいるだろうか。河川敷や土手を中心に長さ10メートルにもなるツルを周囲の植物に絡みつかせ、覆いかぶさるようにして光を遮り、在来種を駆逐する。植生を破壊し「荒れ地」にするほどの繁殖力を持つ北米原産の特定外来生物は近年、本県各地で確認されている。

 県が2014、15の両年度、山形大理学部に委託して実施した外来生物の分布調査によると、県内の主要調査地点でアレチウリの姿は確認されなかった。ただ、調査地点以外の一部自治体で繁殖情報があり、報告書は「小規模な群落が県内に点在している可能性があるため、より詳細な調査が必要」と記載した。

 実際、アレチウリは調査時点で本県に繁殖の群落があり、駆除に取り組む動きが出ている。例えば、青龍寺川の保全活動を推進する鶴岡市のNPO法人は09年度から、駆除を実践する。同法人関係者は「広域的な対応がなければ大変なことになる」と警告する。

昨年の活動で駆除したアレチウリ(NPO法人ゆきやなぎ提供)

 グループホームや就労継続支援B型の青柳作業所などを運営する鶴岡市のNPO法人「ゆきやなぎ」(五十嵐政一代表理事)は、県の「河川アダプト団体」に認定され、庄内地方を流れる青龍寺川の保全活動に取り組んでいる。青龍寺川の植生にどのような保全が必要かを点検・調査する過程で、外来植物に詳しい職員が認定当初の2009年度、三川町青山の川沿いで見慣れぬ植物を見つけた。

 特徴的なハート形の葉に、長いツルを伸ばす植物。06年に特定外来生物に指定された「アレチウリ」だった。実際に近辺の豆畑を浸食する被害が発生していた。早速、駆除の方針が決まったが、当時は、一般的にはあまり知られていない存在だった。初の除去活動の際、参加者から「これがアレチウリでいいんだが?」との声が飛び交ったという。

 繁殖力が残る状態での移動が禁止されていたため、種をつける前の7月下旬に根から抜き取り、枯れるまで放置する作業を毎年続けた。環境省の通達で17年度からは袋詰めの状態での持ち出しが可能となり、焼却処分をしている。施設利用者や地元住民、行政を交えた駆除作業は計14回に上る。

 作業を統括する同法人管理責任者で青柳作業所の佐藤つねみ施設長は「長年の駆除でアレチウリの密度が薄くなっているのを感じる」とする一方、「こぼれ落ちた種が翌年に発芽するとは限らない。数年たって突然生え始めることがあり、継続的な駆除が重要だと思う」と語る。言葉通り、19年に容量40リットル程度の鶴岡市指定ごみ袋で10袋分だった駆除量は20年に5袋分、21年に2袋分と減少したが、22年は8袋分と増加に転じた。

 作業を通じてアレチウリの知識を深めた職員は、県内の至る所で繁殖地を見かけている。アレチウリは本県で静かに、着実に、生息域を広げているのではないか。

 繁殖の被害は全国で見られ、隣県の福島や宮城では既に大規模な生息が確認されている。長野県のように毎年6月を駆除強化月間と設定する取り組みもある。五十嵐代表理事は「どれだけアレチウリが害をなすか知らない人が多い。全県的な駆除に取り組まなければ大変なことになる」。同法人は本年度、7月30日に駆除活動を行う予定だ。

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