音読・山形の民話

　むがし、お寺さんがあって、小僧が1人いだけど。冬の寒風（かんかぜ）ば、何とか利用する方法ないがと、和尚（おしょう）は大（お）っきな甕（かめ）さ、寒風（かんかぜ）ば入れで、夏の暑（あづ）い日に外から帰ってくるど、小僧のいないのを見て、少しふたを開げるど、涼しい風が出てくるのだったど。

　「ああ、涼しい。うちわもせんすも、これがあれば、いらねちゅうもんだ。あぁ極楽（ごぐらぐ）、極楽（ごぐらぐ）」て言ってだどぎ、村から「不幸が出だがら、枕経（まぐらぎょう）あげで（※）おぐやい」て、使いが来たど。小僧ば呼ばって「しっかり留守番してろ」て言うて、和尚（おしょう）が出がげだけど。

　留守番の小僧、そっと甕（かめ）に手をふれると、冷たい。ふたをとってみだら、涼しい風がすうっと出て、あんまり気分ええもんで、そごさ横になって、小僧は眠ってしまったんだけど。

　（※）いっときして「ハクション」て、自分の咳（せき）で目さましたら、甕（かめ）の涼しい風がなぐなってしまっていだもんだがら、こっそり、小僧は屁（へ）をひって、ふたして、（※）知（し）しゃねふりしてたどごに、和尚（おしょう）が戻ってきて、甕（かめ）のふたをそっと開けたら、屁（へ）の匂（にお）い。

　「ありゃりゃ、あんまり暑（あづ）い日だがら、寒風（かんかぜ）ぁ変わってしまった」て、がっかりしたど。とうびんと。