とんと昔。昔あっどごさ大っけな沼あって、ほごさ大っけな大蛇えだけど。ほの大蛇、とぎどぎ、山の上の峠さ行って、娘さ化げで、登てくる人どご、(※)しぇめで食ってえだけど。
あっどぎ、1人の役者登てきたけど。大蛇早速娘さ化げで踊り始めだけど。役者ぁ、たまげだげども「これぁ何がの化げものだな」て思て「お前ぁ何ものだ」と言ったけど。娘ぁ「俺ぁ大蛇だ。俺体大っけぐなて、下の沼さえらんなぐなたさげ、明日、沼破て、洪水おごして、それさ乗って海さ行ぐごどえしたんだ。ほんでも、このごど絶対ほがの人さ語んなな。語っどお前ば食ってすまう」と言うけど。ほうすっど、役者(※)どでしたけど。実ぁ、役者の家、ほの沼の下さあんなだけど。「ああ困った、困った。俺の村、明日流さっですまう。何じょしたらえがべなぁ」て考えで、急えで村さ帰て行ったけど。ほして、村中の人ば集めで、煙草の脂ど鍬どが鎌持て大蛇退治行ったけど。煙草の脂ど鍬どが鎌の金物ぁ、大蛇大嫌えで、少すでもほえず体さ当だっど体腐っですまうなど。大蛇、あっつこっつ逃げだげども、とうどう死んですまたけどぁ。
ほれがらは、峠の化げものえねぐなて、みんな安心して通るよえなたけど。とんびすがんこなえげど。