むがしあったけど。村さ(※)トッキの藤兵衛と呼ばっでだ若者いだったど。あんまり〈突飛〉なほでに、そう呼ばっでいだんだど。
ある時、7人ほどで神さま参りに行ぐごどになったもんで、一番鶏の鳴くど、目さまして、さっそぐ(※)ヤキミシば風呂敷さ包んで、戸の口さ出で、脚半ば巻いだど。よぐよぐ見だら、片方の足さ、ぐるぐる2枚の脚半巻いでいだけど。
神さまは遠がったげんど、みんなど一緒だったがら、お参りもめでだぐ済まして、みんなでそごの茶屋さ上がって、昼飯ていうごどになったんだど。
「こいづがうまそうだ」て、金を出そうどして、ひねった紙包み開げだらば、びっくりこいだど。神さまさ供えるお賽銭の包みで、昼飯に足りながったもんで、1人ばり早く茶屋から出で、原っぱさ来て「やれやれ、腹ぁへった」て、原っぱさ腰おろして、背中の風呂敷を開げでみだど。
「ありゃ、こいづぁ枕だ。うぢのおっかは何間違ったんだが…」て、ぶづぶづ言いながら、やっと家の前まで来たら、川で大根洗ってだおっか見て、ぽかりと頭ば叩いだんだど。
「痛い、痛い。(※)何しんべいこ」て、振り向いだら、大根洗ってだのは、隣のおっかだったもんで、「しまった」て、自分の家さ来て、自分のおっかさ「ただ今は大変(※)無調法なごどして」て、あやまったど。
とうびんと。