むがす、とんとあったけど。あっどさ(※)六部えだけど。あっどぎほの(※)六部、村のはずれの八幡様さ泊まったけど。ほうすっど真夜中、誰がひたひたてお堂さ入てきて、「やぁ、八幡様や、今この村さ、(※)んぼご生まっださげ、んぼごの寿命定め、行ぐべやぁ」て言うけど。
六部、不思議に思て見だげど、誰も見ねけど。ほんでも、八幡様の声して「折角だげども、俺今晩別に用事あって行がんなえさげ、地蔵様や、お前だけ行って決めてこえ」て言うけど。「んだが、んだら俺だけ行ってくる」て
地蔵様ひたひたて出て行ったけど。
ほのうず、地蔵様帰えてきたけど。八幡様、「何て決めできた」て聞ぐずど、地蔵様「虻に鉋。年は25て決めできた」て言うけど。
六部ぁ、「虻に鉋。年は25なて何のごんだべ」て考えだげども、さっぱりわがんなえけど。ほうしてちょうど25年後、六部ぁまだこの村さ回てきたけど。
ほうしたれば、村ん中では、「25なる大工(※)ぼえら死んですまた」て大騒ぎだけど。大工、鉋研ぎしったどごさ虻飛んできて「じゅぐっ」て刺したさげ、大工ぁ(※)動転して「痛え」て、鉋でただえだんだど。ほんで、鉋ぁ切れるもんだっす、ほっから血どんどん出で、大工ぁ死んですまたて、いうなだけど。
ほんで、六部ぁ初めで、25年前の地蔵様の言ったごとわがたけど。んださげ、人の寿命ていうものぁ、神様が決めるもんださげどうにもならねもんだど。とんびすかんこなえけど。