音読・山形の民話

　むがしのごんだど。（※）六部（ろぐぶ）さまが夕方、村さきて、宿さがしして、百姓の家（え）さ泊めでもらうごどになったど。

　六部（ろぐぶ）さまばじろじろ見でるもんだがら、「泊めでいただげれば、お礼の金をさしあげる用意あるがら」ど言うだれば、「さあ、どうぞ」て、風呂に入れでもらい、晩飯（ばんめし）もいだだいて、「さあ、2階（がい）さ寝床（ねどご）敷いだがら、どうぞ」ていうわけで案内されだんだど。

　したら、下で、（※）ごもごもて誰かが来て話始まったど。何のごど話してるがわがんねがったど。そしたら、外で子守娘（こもりつこ）が唄（うた）うだうんだど。

　隣家人（りんかじん）と家人（かじん）と　言（ごん）することを聞（もん）すれば
　旅僧（りよそう）を殺（せつ）すと言（ごん）するぞ
　草のかんむり脱ぎすてで
　山と山を重ねろ

　何べんもくりかえすもんで、何かあるな、て。隣の人とこの家（え）の人が相談して、六部（ろぐぶ）ば殺して、ふところの金を盗もうどしてるがら、〈草のかんむり脱ぐ〉とは、「早く」というごどだし、〈山と山を重ねろ〉とは、「出で行げ」どいうごどだべがらど、六部（ろぐぶ）は、えぐなえこと相談してるなど、（※）がらがら着物を着て、そっと庭の松の木を伝（つた）って逃げで、命助がったんだと。子守をしていだのは、きっと神さまだったんだべ。とうびんと。