昔、昔あったけど。
間沢のある所に大きな旦那さまの家があったけど。田植えの時期が来て、旦那の家でも田植えが始まったけど。
旦那の家の母ちゃんは、目が回るほど忙すえ。縁側を通りかがったら、日当りの良い所に、猫が昼寝しておったけど。
母ちゃんは猫を「ミケ」と呼んで、「こだえ忙すえ時、おまえは昼寝している。何が手伝いでもしたらどうだ」と言ったけど。
そうしたら、いづの間にが猫の姿が見えねぐなったので、どごがに遊びに行ったのだと思っていだけど。
田んぼでは大勢の手伝い人が並んで田植えをしておった。その中さ見たごどもない美すえ娘が1人。大変手早で上手な田植えをする娘だけど。
皆がひと休みしている間でも、せっせど田植えをして、10人前の仕事をするので、3日かがる田植えが1日で終わったけど。
母ちゃんが手伝いの人達に「あの娘はどごの娘だ」と聞えでも、誰も知らながったど。
夕方になると娘の姿が見えないけど。
母ちゃんが夕食を運ぶ時、猫が昼寝する縁側を通ったら、縁側に猫の泥の足跡がついでおったので、あの娘は猫だったとわがったけど。
んだがら、家で飼っている犬や猫は大切にさんなねもんだど。ドンビン。