むがす、あったけど。あっどごさ爺さまど婆さまえだけど。爺さま馬1匹飼ってえだけど。ほうすっど、この山さ狼えだけど。狼ぁ、あっどぎ、大雨の夜、爺さまの家さ馬盗み行ったけど。ほうしたれば、爺さまど婆さま囲炉裏端で何がしゃべったけど。「今夜あだり、狼、馬盗み来っかも知んなえ。(※)おっかね、おっかね」て、婆さま言うずど、爺さまぁ「狼なのさっぱりおかねぐなえ。ほんたえおかねなぁ『(※)古屋の漏り』だ。古え家の雨漏りぁ一番おかね」て言うけど。
ほんで、狼たまげだけど。「俺より偉え『古屋の漏り』て何んた化げものだべ。おかね、おかね」て、どんどど逃げで来たけどぁ。
ほうすっど、ほごさ(※)馬喰も馬盗み来たけど。家ん中さ入んべど思てえだら、(※)ぼえら入り口がら何が黒えもの走て来たけど。馬喰ぁ「ほりぁ馬逃げで来た。捕めでけねんね」て言って、ほの背中さひょえと飛び乗ったけど。ほうすっど、狼ぁたまげで、たまげで「これぁ大変だ。『古屋の漏り』俺さ(※)かがてきた。おかね、おかね」て、背中ゆすりながらどんどど走たけど。ほんで、やっと馬喰どご(※)ひっぽろぎ落どして、山ん中の家さ帰て来たけど。ほれがらぁ狼ぁ二度ど馬盗みすねぐなたけどぁ。とんびすかんこなえけど。