昔、昔あったけど。
東根の若木原で狐と狸が、ばったり出合って自慢話がはじまったけど。ほんでは化げ比べすんべ、ということになったど。
「俺は、おまえより上手に化げるえ」
「いや、俺が上手に化げるえ」
「ほんでは、いづいづこごで化げで、これがおまえだど、当でられだ方が負げ」ということに決まったけど。
ちょうど十五夜の晩、狐は花嫁さ化げで、(※)しずー、しずーど来たけど。
いぐら待っておっても、狸は化げでこねがったので、このあだりで、ちょっと一休みするべど思っていだら、プーンと油揚げのにおいがしてきたけど。
「誰が油揚げ落どして行ったなー」ど思って、その油揚げを拾って食うべど思ったら、(※)はえずが狸だっけど。
「今日は俺の勝ぢ」ど言って、狸は喜んだけど。
狸はいづでも、化げるのが下手ださけ今日ごそはど、日ごろのうっぷんをはらしたんだけど。
上手ださげといって、下手な人ば、あまぐみるもんでないど。ドンビン。