むがしあったけど。(※)やぎめしもって山の畑さ出がげだじさま、半分食って、残りば石の上さ置いっだらば、転がって穴さ落どしたんだど。したら、ねずみの親が出できて「子どもいっぱいいるので助かった。毎日おねがいだ」て言うもんで、毎日2づやぎめし作って、1づば穴さ転ばしてやったど。
ある日、親ねずみが「子どもらも一人前になったがら、お礼に今日は餅を搗ぐがら、一緒に(※)あばっしゃい」て、ねずみの家さじさまば案内したど。したら「おらが死ぬまで、猫の音、聞ぎだぐない」て掛げ声かげて、大きな臼の餅を搗ぐんだど。
餅、腹いっぱい食って、家さ帰るどぎ、外さ干しった大判・小判、土産だというて皆じさまさくれでよごしたんだど。
ちょうどそん時、隣の〈(※)火もらい婆〉が囲炉裏の火種、皆消してしまって「火種(※)おぐやい」て来て、座敷さ山になった大判・小判ば見で、話聞ぐずど、「(※)おしょうしな」も言わねで「んじゃ、おらのじさまもやらんなね、こりゃ」て、隣のじさまも、やぎめし持ださっで出がげだど。
婆は屋根の上で待ってだど。「あら、赤い着物着て、鼻唄うだて帰ってきたな」と思ってだら、干した大判・小判欲しがって、猫の鳴ぎ声を出したもんだがら、ねずみだぢはさっと姿かくし、ねずみだぢから引っががっで、体中真っ赤にして、泣ぎ泣ぎ帰ってきたのだけど。とうびんと。