昔、とんとあったけど。昔、ある村さ仲のええ若夫婦えだけど。ある吹雪の夜、「とんとん」て戸ただえで「どうが今晩一晩泊めでくださえ」て、(※)六部入てきたけど。2人ぁ「早ぐ入れ。早ぐ上がて火さあだれ」て言ったけど。
次の朝間早ぐ、六部「お陰さまで命助かた。ありがとうさま、ありがとうさま。これぁお礼の印だ」て言って、小ちゃこえ地蔵様くっで行っだけど。
ほうしてえるうず、正月なて、2人ぁ赤ん坊連っで、嫁の実家さ正月礼行ったけど。実家でぁ喜んで「よぐ来た、よぐ来た」て言って「これも食え、あれも食え」て、(※)でっつら御馳走したけど。ほんで、背負わんなえ位お土産いっぱいもらて、家さ帰て来たけど。
ほうしたれば、途中(※)ぼえら大雪降ってきて、歩がんねぐなたけど。ほんで、2人ぁたまげで、たまげで、大っけな杉の木の下に穴掘って、赤ん坊さ地蔵様抱がしぇで、ほれぼ2人で両脇がら囲んで、寒ぐなえようえして、ほの晩ぁほごさ泊まるごどえしたけど。ほのうず、雪どんどん降ってきて、とうどう3人どご埋めですまたけどぁ。
次の日、村の人達みながら出で、3人どご探したげども、どごさもえねけど。ほのうず、杉の木の下がら赤ん坊の泣ぐような声聞こえできたけど。ほんで、村の人達急えでほごんどご掘ってみだれば、親父ど(※)ががつぁ、死んですまで、赤ん坊1人、地蔵様抱えで泣えっだんだけど。村の人達ぁ「ああありがだえごんだ。地蔵様、赤ん坊どご守てくっだ」て言って地蔵様どご拝んだけど。とんびすかんこなえけど。