昔、(※)大山の椙尾神社の裏山さ、化げ物いだけど。毎年、お祭りなっど娘どごあげるごとなっていだけど。そうしねど、化げ物田畑荒らすさげ、村の衆、白羽の矢立った家の娘どご、お宮さあげていだけど。
ある年、通りがかった旅の(※)六部、その話聞いで「よし、化げ物の正体見とどけでやる」て、祭りの夜1人でお宮の天井裏さ隠れで見でいだけどや。夜中ごろ、なまぐせ風吹いできて、東の坊と西の坊の(※)大入道2人出できて「そろそろ始めようで」て、娘どご駕籠がら引ぎずり出して、まな板さのせだけど。
「このごど、丹波の国のメッケ犬さ聞がせなよ」て言ってがら、包丁で娘どご2づに切り分げで「来年の今夜、まだお目にかかろで」て、見えなぐなってしまったけど。
これ見でいだ六部、次の朝ま、村中の衆さ話してがら「おれメッケ犬探してきて、化げ物退治してもらうざげ」て、さっそく丹波の国さ出がげだけど。
あちこち探していだば、ある茶店で小牛ほどの犬見だけど。その犬メッケて呼ばれでいださげ、そのメッケさっそく借りで、大山さ戻ってきたけど。お祭りの日、メッケどご駕籠さ乗せでお宮さやったけどや。
夜中ごろ、まだ大入道達出できたば、メッケ「ワンワーン」とかがって戦いなったけど。とうとうメッケ、化げ物どごかみ殺したけどや。んだどもメッケも大傷受げで、死んでしまったけど。化げ物の正体は大むじなだけど。
メッケは、村の衆がらあがめられ、神社の(※)前立ぢになり、お祭りの行列に出はるようなったけど。トンピンカラリネッケド。