参院選・争点の実情(3)安全保障と憲法改正 ロシア暴挙で状況変化

2022/7/1 12:38
ロシアによるウクライナ侵攻で緊張感が高まる中、日本海で今日も操業する中型イカ釣り船。不安の中、出港した=6月11日、酒田市・酒田港袖岡ふ頭

 憲法9条改正や安全保障が争点となった国政選挙は数多くあったが、多くの場合、有権者の関心は消費税や景気回復などの生活に直結する身近な問題に集中していた。「今回は状況が違う」と複数の陣営関係者は有権者の変化を感じ取っている。演説を聴く聴衆の表情や、うなずく際の雰囲気などから、関心を持って聞いてくれていることがうかがえた。その理由とは…。

 「むき出しの暴力を初めて見せられたのが、今回の侵攻だ」。東北公益文科大(酒田市)で国際政治を専門とし、国内では数少ない欧州安全保障協力機構(OSCE)の研究者でもある玉井雅隆教授はロシアによるウクライナ侵攻に対し、世界各国が受けた衝撃をこう、指摘した。とりわけ日本は陸地で国境を接するヨーロッパ諸国と同様、「人ごとではない」との受け止めが大勢だ。

 北朝鮮によるミサイル発射などで、一定程度の危機感はあったが、暴挙を目の当たりにし、日本の安全保障のあり方は一気に深刻さを増した。「ソ連時代が終焉(しゅうえん)を迎えて民主化され、合理的な計算に基づく国になったと見ていたが、それはまやかしだった。力が全てという本性が現れた」と玉井教授は分析する。

 さらに国連は世界平和、経済、社会、環境問題に関する国際的取り組みの先頭に立つ存在だと信じられてきた。それが機能不全に陥っている。あらゆる決議への拒否権を持つ常任理事国・ロシアが国際社会で、ここまで傍若無人な振る舞いをすることは「想定できていなかった」という。

 「食料やエネルギーを輸入に頼り、経済を含めた安全保障のあり方について、ようやく自分事として捉えざるを得なくなった。日本にも係争地はあり、日本海を隔ててロシアや中国、北朝鮮はすぐそばにある」。玉井教授は参院選で安全保障と憲法改正が争点化され、有権者の関心もこれまでになく高くなっている要因について語った。

 本県でもロシアとの関係を強く意識する人たちがいる。酒田港を拠点とする中型イカ釣り船団だ。先月中旬、威勢良く大漁旗をはためかせ、日本海の大海原に出港したが、不安はつきまとう。「今年はちょっといつもと違う。場合によっては拿捕(だほ)されるかもしれない」。ベテランの漁労長はこう言い残し、船に乗り込んだ。イカの漁場形成は海水温などによる回遊ルート次第。日本海の北部の大半はロシアの排他的経済水域(EEZ)で、昨秋はロシア海域に形成された。

 対ロ経済制裁で入域に必要な経費が送金できず、今季はそもそも入れないが「洋上で停泊中に風で流されて入ってしまうことがあったら、大変なことになる」。既に敵対視されている日本の漁船を拿捕しかねないからだ。不安材料はロシアだけではない。北朝鮮のミサイル発射は今年、先月初めまでで大陸間弾道ミサイル(ICBM)含め既に33発と活発化。中国漁船を含めた違法操業も懸念される。今日も国際情勢の最前線で操業している。

 本県と宮城、福島の南東北3県を管轄し、国防の第一線にいる陸上自衛隊第6師団。このうち約2600人の隊員が東根市の神町駐屯地で有事に備える。隊員の家族は参院選を複雑な心境で見ている。国はウクライナに「平和憲法の範囲内」との解釈で自衛隊輸送機による防衛装備品の提供を行い、関与の度合いを強める。同師団からは2004~05年、イラク戦争に伴う第4次イラク復興支援部隊が派遣された。今後、どのような展開になるかは不透明な状況だ。隊員の妻は「家庭で詳しく話すことはない。夫の無事を願い、自衛官が誇りを持って働ける環境を望む」と語った。

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