参院選・争点の実情(5) 下がる年金、上がらぬ賃金

2022/7/3 10:20
派遣の仕事や季節労働が中心の50代女性。まとまった貯金はなく、政府が促す「投資」の余裕はない=長井市

 6月下旬。40日間の入院生活を終えた村山市の男性(75)の心は梅雨空と同様に晴れなかった。長年付き合った腰の痛みが限界で手術を受けた。手術費や入院費は計約10万円。多くない年金と市シルバー人材センターの仕事で暮らす身にとって、大きな出費だ。術後はしばらく仕事ができない。4月から年金支給額が下がった。「ぜいたくはできない」とため息をつく。

 約30年間続けた魚の行商を10年前に引退した。1カ月当たり約8万円の国民年金だけでは1人暮らしでも苦しい。同センターから特別養護老人ホームの送迎車を運転する仕事を紹介され、その報酬4万円弱を生活費の足しにしてきた。

 今後、当面の収入は年金のみ。高騰する燃料代や食料価格が重くのしかかる。節約のため電気の契約アンペア数を下げ、好きなお酒を控えるつもりだが「冬の灯油価格はどうなるのか」と不安は尽きない。

 相次ぐ物価高は、高齢者だけでなく多くの現役世帯の暮らしに影を落とす。一方で本県の労働者の賃金は横ばいが続き、現行の県最低賃金(時給822円)は全国平均(同930円)と開きがある。中でも女性は男性に比べ待遇や雇用形態で不利な部分が多いとされ、非正規労働や離婚件数の増加に伴い、貧困に陥るリスクが高まっている。

 国民の暮らしをどう守るのか。政府は4月に打ち出した緊急対策に、低所得の子育て世帯に対する給付金など1兆3千億円の生活困窮者対策を盛り込んだ。加えて岸田文雄首相は家計に金融商品への投資を促す「資産所得倍増プラン」を掲げている。一方、野党は参院選公約で「消費税率5%への時限的減税」「最低賃金を時給1500円に引き上げ」「年金削減のストップ」などを挙げる。

 派遣の仕事や季節労働が中心の長井市に1人で住む50代女性。離婚を機に市外から引っ越した。5年ほど前から定職に就くことができない。求人は以前より増えていると感じるが、採用までは至らない。「応募しても落とされる。女性だからか、年齢が問題なのか」。諦めに似た気持ちを抱く。

 天童市や寒河江市、飯豊町などで季節労働や短期の食品製造、農産物収穫の仕事を見つけ、自家用車で通った。通勤エリアを広げ、少しでも収入のいい職場を探した。朝から深夜まで働き「何とか生活をつないできた」。

 最近、車を維持することができなくなり手放した。職を選択する上で状況が変わった。働ける職場は自転車で通える範囲。選択肢は狭まった。市内の果樹園に雇ってもらったが、時給は県最低賃金に近い850円ほど。まとまった貯金はなく、首相の言う「投資」の余裕はない。

 「新しい仕事を探さないと」と現実を見詰めつつ「(国が支援する)住民税非課税世帯などだけでなく、自分のようにぎりぎりの状態の中間層にも目を向け、給付金などの手だてを講じてほしい」と訴える。

 村山地方に住む女性(38)は4人の子を持つシングルマザー。コンビニで週6日働き、日中と深夜を掛け持つ日もある。冬場の週末はスキー場でも働く。「仕事は楽しいから苦にならない」と気丈だが、表情に疲れの色がにじむ。

 5年前、共働きの夫と離婚した。互いの薄給も一因だった。離婚後の収入減は覚悟した通りだが、最近は灯油やガソリン代の想定外の高騰が家計を直撃。食べ盛りの子どもを抱え、食費の切り詰めは限界だ。

 物価が上がるのになぜ給料は上がらないのか―。女性は率直な疑問を口にし、続けた。「その理由を誰かに教えてほしい。選挙をきっかけに社会問題の仕組みを理解し、考えたい。自分たちにできることも見えてくるかもしれないから」=おわり

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