山形での時間、大きな存在 山形市出身・小川糸さん、本紙連載小説21日スタート

2022/8/16 08:54
本紙で「椿ノ恋文」を連載する小川糸さん

 山形市出身の作家・小川糸さん(48)による新聞小説「椿(つばき)ノ恋文」の連載が21日から、本紙で始まる。鎌倉で文具店を営みながら、代書の仕事を請け負う女性が主人公の「ツバキ文具店」シリーズの新作だ。小川さんにとっては初めての新聞連載で、「古里の慣れ親しんだ新聞で連載できるのはうれしいこと。主人公の日々の成長や変化を、親戚のように見守り楽しんでもらえれば」と語った。

「主人公の成長見守って」

 小川さんは2008年、「食堂かたつむり」で小説家デビューした。以来30冊以上の本を出版。色鮮やかな筆致と、心温まる物語が読む人を引きつける。「ツバキ文具店」は16年に出版され、翌年には続編となる「キラキラ共和国」も刊行。同年にはドラマ化もされた。主人公の鳩子(ポッポちゃん)は亡くなった祖母の跡を継ぎ、文具店の傍ら、友人への絶縁状や天国からの手紙など風変わりな代書の依頼を請け負う。一筋縄ではいかない祖母との関係性、温かなご近所付き合い、シングルファーザーとの結婚などの日常も描いた。

 今回連載する「椿ノ恋文」では、3児の母親となった鳩子が代書業を再開させる。「数年もたつと、思いも寄らない変化が起こる。一方で代書をする仕事のあり方は変わらない。その変化するものと続いていくもの、両方を描いていきたい」とする。小川さん自身、高校卒業後から古里を離れて暮らし、また近年両親が亡くなったことで、山形の捉え方が大きく変わったという。「小さい頃と同じ風景を見ているはずなのに、びっくりするくらい感動したりして。この年になって山形の良さや自然の恩恵を感じるようになった。物語を書く上でも、山形で過ごした時間が大きな存在だと改めて思う」と語る。

「椿ノ恋文」挿画

 物語の軸となるのが手紙だ。書くのも、もらうのも好きだという小川さんは「メールなどと違って時間も手間もかかる分、気持ちの伝わり方が違う気がする。ただ、書くことに尻込みする人もいる。そんな時に代書してくれる人がいたらとの思いで物語を書いた。アナログで非効率だけど、ゆるやかにつながれる。今の時代にこそ、そういう機会を大事にしたい」。新型コロナ禍で気付かされた「何気ない日常の貴重さ」を思い、小説が「日々を豊かに生きることの大切さに気付くきっかけになれたらいい」とする。

 初の新聞連載で、新たな読者との出会いにも期待を寄せる。「shun(しゅん)shun(しゅん)さんのすてきなイラストと一緒に、初めてポッポちゃんの世界に触れる人にも楽しんでもらえるようにしたい」と語った。

shunshunさん

心なごむ絵、届けたい―shunshunさん

 手紙を書いたら人生が少し変わった。そんな経験はありませんか。電話でもメールでもSNSでもなく、思いを込めて書いた手紙であればこそ伝わることがある。そんな手紙のもつ不思議な力を思い出すような小説とともに、心がホッとなごむような絵を届けたいです。

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