細い縮れ麺に澄んだあっさりしょうゆの米沢ラーメン。多くのラーメン店で味の決め手として愛用されてきたしょうゆが製造元の閉業で市場からなくなった。各店ではスープの味の維持に頭を悩ませたが、要望を受けた米沢市内の醸造所がしょうゆを復活させた。
同市大町3丁目にある今野味噌醤油(みそしょうゆ)醸造店は1900(明治33)年に創業した。2019年に帰郷した6代目の今野良輔さん(31)が父母と切り盛りする。近くにあった老舗「カネマス醤油」の閉業を知ったのは20年3月だった。「すごく悲しかった」。味を引き継げないかと考えたが、完成までの手間を想像し、二の足を踏んだ。
甘さがあり、うまみの詰まったカネマス醤油は多くのラーメン店で使われており、「何とか似たしょうゆを造ってくれないか」と、飲食店から切実な思いが寄せられた。そんな相談がいくつもあり、「自分がすべきことだ」と奮い立った。
カネマス醤油側に熱意を伝えると、秘伝の製造のポイントと卸先数十件の名前を教えてくれた。身が引き締まる思いだった。
塩味、甘み、うまみ―。しょうゆは釜の大きさや火入れの温度、微妙な味付けで表情が変わる。カネマス醤油と同じ生揚げ(加熱処理をしていないしょうゆ)を使い味を調整した。バランスが難しく、1年以上に及んだ試作は25回にも上った。
試作当初、あるラーメン店主から「しょっぱ過ぎて色も濃い」と指摘された。助言をもとに改良し、各店へ何度も持参した。納得できる味に仕上がると、ラーメン店主は「(味が変わって)お客さんが遠のくことも覚悟していた。大したものだ」とたたえてくれた。カネマス醤油が閉業前にできる限り多くの醤油を造り、各店に在庫があったことも手助けとなった。21年4月ごろ濃口と淡口(うすくち)の2種類が完成した。
試行錯誤の日々を経て、今野さんは「全国的にもしょうゆ醸造所はどんどん減っている。伝統を守っていきたい」と語る。商品に関する問い合わせは同社0238(23)1354。
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