本県農産物を代表するサクランボの生産現場で高所からの転落事故が相次いでいる。園地では雨よけハウスの被覆や摘果、収穫など、高い所での作業が多い。先月には死亡事故も発生した。比較的短期間に集中し、高所での作業が続く収穫期を前に、県などは注意を呼びかけている。
県によると、生産者が重傷を負った農作業中の事故は今年1~5月に9件発生。うち6件がサクランボ関連だ。先月3日には東根市内でハウスに上ってビニールの被覆作業中、60代男性が転落し、死亡した。その後もハウスや脚立からの転落事故が相次いでいる。
サクランボの露地栽培は梅雨前ごろから、パイプハウスに雨よけのビニールをかける。高い所は地上から約5メートルだ。秋場尚弘JAさがえ西村山さくらんぼ部会長(69)=寒河江市=は「命綱を着用すべきだが、作業が追いつかないとして、着用しないケースもあるようだ」と現場の実情を語る。
ハウスの老朽化も事故につながる大きな要因だ。さびたパイプのつなぎ目が外れ、上った際に落下する恐れがある。「安全のためには修理や建て替えは必要だ」と、寒河江市で生産する渡辺敏幸さん(82)。最近は機械で被覆できるハウスもある。だが、資材高騰などもあり、現実的には全ての生産者が施設を更新するのは難しい。
葉摘みや摘果など、収穫前も高所作業は続く。県は来月15日まで、サクランボに関する農作業事故防止強化期間としている。収穫期は発送を含め、未明から夜まで作業をするケースもあり、忙しく疲労もたまる中、高所作業などでは十分な注意が求められる。県の担当者は「無理なく焦らず作業をしてほしい」と、本県農業の顔・サクランボを安全第一で市場に届けるよう求めている。
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