韓国、魅力たっぷり~訪問事業ルポ(下) 華やかさの裏に

2023/9/22 22:22
昨年から一般公開が始まった青瓦台。地元の人や観光客が多く訪れる

 美容やファッション、ドラマにK-POP…。日本では文化や芸能だけでなく、韓国発のブームが続いている。時代の先端を行くイメージが強いが、韓国を語る上では、韓流の華やかな部分だけを見るだけでは十分ではない。朝鮮戦争と、その後の分断の歴史の傷痕はいまだに残っている。

 北朝鮮からの脱北者の証言を基に発見された「第3トンネル」もその一つだ。北朝鮮が韓国に侵攻するために掘ったとされる。現在は朝鮮半島の安全保障上の歴史を伝え、紹介する「安保観光地」と呼ばれ、外国人観光客の他、修学旅行で現地の子どもたちも訪れる場所だ。

 ただの観光地ではない。中に入るにはパスポートが必要で、ゲート付近では軍関係者から本人確認を受ける。内部の撮影は厳禁で、持ち物は全てをロッカーに預ける。ヘルメットを装着し、地下73メートルにあるトンネルに入る。高さと幅は2メートルほどと狭い。見学できるのは全長1.6キロのうち265メートル。軍事境界線までは遮断壁が設置されている。

 内部の空気はひんやりと冷たい。狭いところは身をかがめ、人がすれ違うのがやっとといった所もある。掘削時、ダイナマイトで発破したとみられる痕跡が生々しく残っている。壁までたどり着くと、のぞき穴があった。中には、さらに壁が見える。その先は北朝鮮だ。

 韓国滞在2日目の今月13日、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。各社ニュース速報を打つ日本とは異なり、現地では緊迫した様子は感じなかった。「日本海に向けて発射されるもの」という認識が韓国では強く、ミサイルへの危機感は日本ほど強くないという。同日、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の会談も行われた。こちらは韓国でも関心が高いらしく、翌朝の現地の新聞は、各紙1面で報じていた。

 日本ではミサイル発射もあり、北朝鮮への脅威は近年、高まっている一方で、韓国では華やかなポップカルチャーなどを見ると、日々の危機感は若い世代では薄れているようにも感じる。ただ、韓国にとって北朝鮮は身近な脅威であることには変わらない。第3トンネルの訪問やニュースを通じ、日本とは性質の異なる緊張感があると感じた。

 「お隣の国」韓国は仙台空港から約2時間半ほどだ。時差もない。日韓は良好な関係に向かっているが、日本周辺を含め国際情勢は厳しさを増している。「これまでの近くて遠い国ではなく、もっと身近な国になってほしい」。現地の女性の言葉が心に響いた。

第3トンネル周辺は「安保観光地」として人気を集める

「青瓦台」ソウルの新観光スポットに

 韓国大統領府として使われてきた青瓦台(チョンワデ)が、昨年から公開され、ソウルの新たな観光スポットとして注目を集めている。

 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が就任した際に大統領府を移転。現地で青瓦台は、米国のホワイトハウスになぞらえ「ブルーハウス」と呼ばれていた。1948年から使われており、大統領が記者会見したスペースや、会談をした迎賓館も見ることができる。歴代大統領を紹介するコーナーもあった。

 当日は雨が降る中の訪問だったが、広い庭を散策する人もちらほら。中を見学する現地の人も多く、混雑していた。「青瓦台、国民の懐へ」。敷地の入り口付近には、こう書かれたオブジェが建っている。

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