沼田建設社長 金田孝司氏 |
【インタビュー】
-業界の現状は。「建設業は地域住民が安全に安心して暮らせるようにインフラを整備し、社会貢献を果たす商売であり、永遠になくならない仕事だと思う。特に豪雪地帯の最上地域では除排雪の担当技術者や機械オペレーターがハードな作業を求められ、地域のためという使命感を持って臨んでいる。他の業界にもいえるが、少子高齢化で若い世代がなかなか地元に定着しないことが課題で、地方創生のために改善を図りたい。わが社では3年前に奨学金制度を創設し、現在2人の大学生が活用している。また毎年2、3人の地元高校生が入社する。大変ありがたいし、この若い力を地域活性化に役立てたい」
-求める人材は。
「やる気にあふれ、コミュニケーションを図れる人を望む。建築も土木も技術者のチームワークが重要で、指導的立場の上司によるフォローがなければ、その人は成長しないし、品質や出来栄えは向上しない。われわれは現場に着地し、そこに会社と同じような一つの組織を構築する。高品質のものを作るには働く者同士はもちろん、発注者や近隣住民としっかりコミュニケーションをとらないと、現場は工程通り進まない。会話から相手の意欲や悩みを理解したり、住民のニーズを把握できたりもする。会社としてもしっかり教えていきたい」
-人材育成にどう取り組んでいるか。
「技術者向け講習会に積極的に参加し、少しでも知識を吸収するよう呼び掛けている。担当者は発注者よりも技術面、知識面で上回るくらいの力量を身に付けるべきで、それが相手に安心感、信頼感を与える。指示待ちでは絶対やっていけない。資格を取ったから優秀ということではなく、その先を目指す向上心を常に持とうと話している。また、健康管理をしっかりできる社員を育てたい。わが社では職員が35歳になるとPET・CTと脳ドックを受診してもらい、料金の8割を会社が負担している。45歳以降も3年ごとに続けてもらっており、健康第一という意識が育っている」
-仕事上で影響を受けた人物や言葉は。
「元三重県知事の北川正恭さんが『着眼大極、着手小極』という表現を使った。目を付ける所は大きく極め、手を付ける所は小さい部分から極めて、という意味。励まされる言葉で社員にも教えている。松下幸之助さんの『ものをつくる前に人をつくる』も経営の根幹は人だということを示しており、肝に銘じている。会社のためにできることを皆で一緒に考え、一歩先に立って行動し、もっといい会社になるよう努力していく」
★金田孝司氏(かねた・たかし) 専門学校を1975(昭和50)年に卒業後、土木コンサルタント会社に勤務。79年沼田建設に入社し、常務、専務を経て2010年、6代目社長に就任した。最上町出身。62歳。
★沼田建設 1930(昭和5)年創業で51年に法人化。ビル、学校、住宅といった建築工事を手掛け、土木分野も肘折希望大橋、砂防ダム、道路など幅広く施工。資本金6千万円。株式の60%を社員持ち株会が保有する。従業員数は約120人。本社は新庄市鳥越1780の1。
【私と新聞】地域版の笑顔に心和む
金田孝司社長が必ず目を通すのは山形新聞の地域版だ。子どもや家族、住民の笑顔の写真に心が和み、触れ合いの大切さを実感する。最近は、出身地の最上町月楯で行われた「楯っ子田んぼアート田植え」の記事に感激した。「地域密着の記事をもっと増やし、地方紙の威力を見せつけてほしい」と話す。
おくやみ欄も欠かさない。会社が長年世話になった施主や地域住民への最後の恩返しを忘れないようにと社員と共にチェックしている。
子どもが受験生のころ、「中学生講座」を見せて問題を解かせたという。「学力アップに役立ったはず」と振り返り、新聞は教育のための重要なツールでもあると強調した。
【週刊経済ワード】法人企業統計
企業活動の実態を把握するため、財務省が定期的に行う調査。業種や資本金別に売上高や経常利益などを集計し、特に設備投資の動向が注目される。調査結果は内閣府が発表する国内総生産(GDP)の改定値に反映される。3カ月ごとの四半期別調査と年1回の年次別調査があり、四半期別は資本金1000万円以上の企業が対象となる。