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北郡信用組合理事長
西塚一彦氏
西塚一彦氏
【インタビュー】
 -金融業界の現状を踏まえ、北郡信用組合の求める人材とは。

 「現在の金融業界は非常に厳しい。金利水準が異常に低い状態が長く続いていることに加え、24時間営業のネット銀行の預金・ローン利用も増え、見えないところで徐々に影響を受けている。一番力を入れているのが『家計安泰支援』。お客さまとの会話に集中し、その中から『何に困って何を相談したいのか』を敏感に感じ取れる感性が必要。もちろん、お客さまから信頼してもらうことも大切だ。コンプライアンス意識を常に高く持ち、金銭感覚を身に付けることの重要性を毎年、新入職員に話している。お金の相談があるなら『まず、きたしんの○○さんに電話したら』と言われる人にならなければいけない。これはどのポジションでも変わらない」

 -感性を磨き、信頼を得るためにはどのような努力が必要か。

 「生まれつき感性豊かな人もいるが、感性は磨かれる。鍛えて練り上げる、人格の陶冶(とうや)が必要。自分に足りないところは素直に取り入れ、それをアレンジして自分のものにする。内勤者にも営業マンにも常々、きたしんの職員は福の神であらねばならないと言っている。献血や寄付行為なども奉仕だが、お客さまから『おかげさまで』とひと言いただくことが、きたしんの経営理念における奉仕の意味だ。FS(フィールドセールス・実践)や山形大、東北大と連携したコーディネーターやファイナンシャルの資格取得など、人材育成のための内部研修にも力を入れている。自己研鑽(けんさん)を重ねて感性を磨く。この積み重ねがキャリアだ」

 -自らが仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「歴代の理事長。中でも、『経営にマジックは絶対に存在しない』と説いた初代伊豆倉精治氏から学んだことは多い。経営・事業は手品のように、ある日突然業績を上げるようなことはできない。コツコツとやることが大切だ。『摩擦を恐れるな、競争は当然』『愛嬌(あいきょう)はこぼれて減らぬ身の宝』など、伊豆倉氏の言葉を何よりの教えとし、役員や職員にも伝えている。『人格の陶冶』も若い頃に教えていただいた言葉だった」

 ★西塚一彦氏(にしづか・かずひこ) 東京経済大短期大学部卒。1966(昭和41)年に北郡信用組合に入組。常勤理事、常務理事などを経て2007年から現職。10年から県信用組合協会長、17年から全国信用組合中央協会副会長を務める。尾花沢市出身。72歳。

 ★北郡信用組合 1952(昭和27)年創立。北村山地域、河北町、最上地域、天童市、山形市を営業地区とし、10店舗、1出張所、1研修所を持つ。出資金は8億7700万円。組合員数は1万9910人で、常勤役職員数(パート含む)は140人(いずれも今年3月末現在)。本店所在地は村山市楯岡晦日町1の8。

【私と新聞】生活の大事な必需品
 「読めない日は、何か忘れ物をしてきたような気がする。靴やネクタイなどと同じように、毎日の仕事と生活の大事な必需品」と語る。ネットが便利になり、スマホやタブレットも使っているそうだが、「一日の始まりは新聞から。朝起きて、玄関まで取りに行くのがとても楽しみ」。

 週一回の会議の最初に、目に留まった記事について話し合うという。国内外の経済や金融関係はもちろん、行政や地区の話題、慶事や仏事など、見逃した記事はないかを、みんなで確認するようにしている。職員には当然、新聞を読むことを勧めている。また、内定した職員にも毎日読む習慣を身に付けるよう指導している。

 「地元のことでも地元紙で初めて知ることも多い。新聞を通して地域の歴史や文化が伝わっていくことを期待している」と語る。

【週刊経済ワード】通貨交換協定
 金融不安に伴う投資資金の国外流出や投機的な通貨売りなどに備え、各国の政府や中央銀行が外貨を融通する約束を交わす制度。協定で定めた総額の範囲内で、緊急時に実行する。日本の財務省がインドネシアなどの当局と締結した協定は、主に円または米ドルと現地通貨を融通し合う。日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国が2400億ドルの融通枠を設けた「チェンマイ・イニシアチブ」のように多国間の枠組みもある。
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