NIBフロントライン

加藤紙器社長
加藤真佐夫氏
加藤真佐夫氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、自社の取り組みは。

 「国内の包装業界のうち、段ボール事業は通販業界の活況で全体的にプラスになっているが、一般的には海外生産への切り替えや少子高齢化で、人手に頼る生産現場での使用量は減っている。当社は段ボール事業の強化策として、複雑な箱や組仕切り、緩衝材に対応できる抜き加工設備を増設した。印刷紙器事業はデザインから製版、印刷、抜き、貼り、ラミネーターまでの一貫した製品化を実現している。プラスチック段ボールは、取引先に品物を届けるための『通い箱』として主に利用されるが、この製品に対応するため、シルクスクリーン印刷機や特殊な接合機械などを取りそろえており、現在は半導体や自動車関連メーカーからの仕事が多い。輸出向けの梱包(こんぽう)材は、製品の製造装置や重量物を梱包して取引先の輸出業務を支えている。この四つが事業の柱になっており、次の一手は顧客の新規開拓だと考えている」

 -求める人材は。

 「真面目で素直な人物が一番だ。人の話をよく聞き、自分なりに考えて発言できる人。素直な人は入社してから努力してもらえれば、たいがいは大丈夫だ」

 -具体的な育成方法は。

 「物を包む大本はデザインだ。言い換えれば設計図やソフトウエアが当社の背骨になっている。そうしたデザインの方向性を身に付けて会社に還元してもらおうと、デザイン展や物流展、資材展など、これだと思った展示会には毎年、社員を送り込んでいる。投資育成会社の階層別研修や品質管理の試験なども積極的に受けるようにしている」

 -自らが仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「若い頃は稲盛和夫さん(京セラ創業者)の盛和塾に入ったり、日本青年会議所に出向したりして、いろんな人に会って勉強しようと燃えていた。ただ、この年齢になると、いい会社をつくるためには心構えが最も大切だと思うようになった。手帳には『思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから』といったマザー・テレサの一文を貼り付けている。約30年前、住友生命からいただいた冊子『孫子と経営』もぼろぼろになるまで愛読しており、永六輔さんの詩も経営の参考にしている」

 ★加藤真佐夫氏(かとう・まさお) 日本大理工学部卒。大手製紙会社勤務を経て1978(昭和53)年、父が経営する加藤紙器に入社。常務、専務を経て2005年、社長に就任。長井商工会議所では副会頭、会頭職務代行者を経て16年11月から会頭。長井市出身。65歳。

 ★加藤紙器 1952(昭和27)年創業。主な業務は段ボールとプラスチック段ボール、印刷紙器、輸出梱包の製造。物流を担うトータル・パッケージ専門メーカーとして企画設計からデザイン、製造までを担う。従業員は54人。資本金は5千万円で、94年に東京中小企業投資育成から2千万円の出資を受けている。本社は長井市今泉691の1。

【私と新聞】経済面、普段から注目
 工業、食品関係の取引先が多いため、普段から注目しているのは山形新聞の経済面。「最近の紙面で例を挙げると、飯豊町での自動車部品工場増設、米沢市へのリチウムイオン電池開発製造拠点の新設といった記事が掲載されたが、山形新聞の情報が一番速く、内容も詳しい」と話す。進出企業の記事については「取引が可能かどうか。自分の会社の強さを生かせるか」といった視点で読み込む。

 長井商工会議所会頭という重責を担っているため、地域づくりやボランティアの記事にも目を引かれる。「地域活動に本気で取り組んでいる人に光を当ててくれるのは地方紙ならでは」と語る。東北芸術工科大をはじめとする学生の明るい話題も励みになるという。

 「人口減少に歯止めをかけるための方策、東北中央自動車道の整備に伴う影響といった記事も今後読んでみたい」と期待を寄せる。

【週刊経済ワード】採用活動のルール
 大学や産業界などが申し合わせた「就職協定」として1953年に始まった。96年に旧日経連(現経団連)会長が協定の廃止を表明、採用選考に関する企業の「倫理憲章」を制定した。2011年に説明会や面接の解禁日程を明文化。13年に経団連が全会員企業が順守すべきものとして「指針」に名称を変更した。政府の要請で16年入社から「3月に説明会解禁」「8月に面接解禁」にそれぞれ繰り下げて規定したが、「解禁破り」が相次いだため1年で修正した。
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