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県信用保証協会理事長
佐藤嘉高氏
佐藤嘉高氏
【インタビュー】
 -業界、協会の現状と力を入れている取り組みは。

 「2008年のリーマンショック後はセーフティーネット保証の利用が増え保証額が伸びた。現在は順調に償還されており、当協会も含め全国的に保証債務残高は減少傾向にある。地域の事業者の資金需要を把握し、課題解決につながるように、短期継続型保証『たんけい』や社会貢献応援型特定社債保証『貢献』など新商品を創設して提供しており、保証承諾額は東北6県の協会の中で最多となっている。県内中小事業者の資金調達を支援するのが本務であり、県の活力ある経済発展に貢献することがわれわれの使命だ。協会は今年創立70周年を迎える。志を同じくする金融機関や各種団体と手を携え、事業承継や移住、創業を後押しし、地方創生に貢献したいと考えている」

 -求める人材は。

 「組織は一つの社会であり、円滑な人間関係を築く大前提は『良識ある社会人』であることだ。難しく考える必要はない。▽人と会ったらあいさつをする▽困った人がいたら助ける▽年配者を敬う▽感謝を言葉で表す-といった、ごく当たり前のことができる人であってほしい。これができないと、組織の中にひずみが生じてしまう」

 -どのように人材を育成しているのか。

 「第一に、先輩が後輩の面倒をしっかり見るという人材育成の良い伝統がある。われわれは中小事業者のさまざまな経営相談に応えられる存在を目指しており、専門知識を有した人材の養成に向け、中小企業診断士の資格取得を推奨し、後押ししている。1~3年目の職員には通信教育などを活用し信用調査や財務、融資債権回収などの基本的な知識を積み重ねてもらい、4、5年目から診断士の勉強をしてもらう。現在、有資格者は15人おり、本店と支店に配置している。自分自身も県職員になってから不動産鑑定士の資格を取った。働きながら学ぶことは大変だが、知識やスキルの向上だけでなく、頑張る力が養われる」

 -仕事上影響を受けた人物は。

 「4人の知事の下で働いたが、中でも吉村美栄子知事から最も大きな影響を受けた。仕事を通じて出会った師の1人だ。県の発展のために全身全霊で取り組む姿、強い思いと行動力を目の当たりにし、組織のトップのあるべき姿を学ばせていただいた」

 ★佐藤嘉高氏(さとう・よしたか) 明治大経営学部卒。1979(昭和54)年に県庁に入り、観光経済交流局長、庄内総合支庁長などを歴任。退職後の2015年に県観光物産協会専務理事に就き、18年4月から現職。不動産鑑定士。山形市出身。64歳。

 ★県信用保証協会 1949(昭和24)年設立。中小企業や小規模事業者が金融機関から事業資金を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくなるよう支援する公的機関。2018年度の保証承諾額は1201億2300万円、保証債務残高は2941億7200万円、代位弁済は43億200万円。保証承諾額は東北6県の協会で7年連続最多、保証債務残高は3年連続最多。役職員数81人。企業の資本金に当たる基本財産は236億9100万円。米沢、鶴岡、酒田、新庄、長井に支店がある。本店所在地は山形市城南町1の1の1、霞城セントラル内。

【私と新聞】一日の始まりの儀式
 佐藤嘉高理事長は毎朝、自宅でお茶を飲みながら30~40分かけて山形新聞を読む。「一日の始まりの儀式のようなもの」と語る。出勤後は経済関係記事を中心に、経済紙や全国紙に短時間で目を通す。気になった記事があればファイルして、後からじっくりと読み直す。

 「新聞は自分にとって極めて重要な情報ツール」と話し、共有すべきだと考えた記事は関係部署に回覧する。「自身が気になっている話題を皆に知ってもらいたい」という意図もある。

 仕事を抜きにして楽しみにしている記事に、山形新聞の「談話室」と日本経済新聞の「春秋」を挙げる。共に「4段落各7行、段落末尾は1文字空け」のスタイルで書かれた1面のコラム。「筆者のこだわりと職人技、若干の苦労を感じながら、談話室の場合は『書いたのはこの記者かな』と想像しながら読んでいる」

【週刊経済ワード】景気動向指数
 国内景気の全体的な変化を捉えるため、毎月公表される統計。景気の現状を示す一致指数は、速報段階では鉱工業生産指数や小売業販売額、有効求人倍率など景気に敏感に反応する7指標を合成。一定期間の変化を分析し「改善」「足踏み」「局面変化」「悪化」「下げ止まり」の5段階の基調判断で傾向を示す。数カ月先の情勢を表す先行指数と、景気に遅れて動く遅行指数もある。
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