NIBフロントライン

スタンレー鶴岡製作所社長
前田喜行氏
前田喜行氏
【インタビュー】
 -自社の現状は。

 「当初主力だった超小型電球は省エネの普及と共に数量が落ちる一方、発光ダイオード(LED)は自動車や二輪のヘッドライト、テールランプなどで需要が伸びている。世界的な流れで、地球温暖化対策としてハイブリッドや電気を動力とした自動車が主力になりつつある中、LEDヘッドライトへ切り替わっていくと思われる。さらに自動運転の進展に対応した赤外LED、殺菌・除菌用途での展開が期待される紫外LEDを安定供給できる体制を構築するため新工場を建設している。創業50周年を迎える2021年4月完成を予定している」

 -社員に求める意識や能力は。

 「当社では人事方針として向上心、向学心に満ちあふれた人を求めている。大きな変化を迎えている今だからこそ自分の将来像をしっかりと描き、必要なスキルを身に付けてほしい。当社では生産設備の内製化に力を入れている。使いやすい設備を開発、導入し生産性を高めることで、海外の競合他社と戦うことができる。ハード、ソフト両面での開発力や、自動化が進んだ設備を使いこなせるスキルが必要だ。新しい物を生み出すには、今に固執せず、今を肯定せず、常に疑問を持って仕事に取り組む姿勢が不可欠と考える」

 -人材育成の取り組みは。

 「年齢、性別に関係なく自らの意思で教育を受けられる機会を設けている。スキルアップのための資格取得について助成金制度をつくり、サポートしている。グローバル化への対応のため、管理職昇格には一定の英会話力が条件。市場の動向、環境の変化に対するアンテナを張り、新聞や書籍、電子媒体などから常に新しい情報をキャッチする姿勢も望まれる」

 -仕事で影響を受けた人物、教えは。

 「高校卒業の際、所属していた陸上部の顧問から贈られた色紙の『陸上競技 即人生』という言葉が、常に心の中にある。厳しい練習を積んだ分、どんなつらいことにも耐えられるという励ましに支えられてきた。親会社であるスタンレー電気の北野隆典社長からは、ものづくりの基本を学んだ。良い物を早く安くお客さまに届ける信念がぶれることはなく、自分もそうありたいと思っている」

 ★前田喜行氏(まえた・よしゆき) 山添高(現鶴岡南高山添校)卒。農機具販売メーカー勤務を経て1989年、スタンレー鶴岡製作所入社。取締役生産統括部長などを務め2015年から現職。朝日村(現鶴岡市)出身。55歳。

 ★スタンレー鶴岡製作所 スタンレー電気(本社・東京都)の100%出資子会社として1970(昭和45)年設立、71年創業。超小型電球の専門工場としてスタートした。技術ノウハウの蓄積と設備の拡充に伴い、78年にLEDランプ、82年にLED応用製品の生産を開始。資本金21億円。社員数は約420人。所在地は鶴岡市渡前字大坪45。

【私と新聞】国内外の市場動向つかむ
 情報源として、新聞を日々活用している前田喜行社長。午前5時ごろに起き、家の掃除をしてから読むのが日課という。1面から目を通し、気になった記事を深く読む。特に注目するのが政治、経済関係で「同業他社の動き、考えが気になる」。国内外の市場動向などをつかみ、会社が今後取り組むべき課題を知る大切な時間としている。

 これまで知らなかった鮮度の高い地元地域に関する情報も得て、会社での朝礼、客との対話の際に話題として役立てている。「記者が現場で見て、聞いた地域密着型の記事は、地元の人間として共通認識を持って読むことができる」と語る。

 地域活性化を図るためには、県内で就職する人を増やすことが必要と考えている。「県民に地元企業を知る機会を提供することが必要。その役割を新聞に果たしてほしい」と力を込めた。

【週刊経済ワード】ユニバーサルサービス
 国民生活に不可欠として、法律で全国一律に提供されることが義務付けられているサービス。NTT東日本と西日本には固定電話や公衆電話、緊急通報などを提供することが求められている。サービス維持のため、利用者負担による交付金がNTT東西に支給されている。日本郵便にも郵便事業や貯金・保険業務の提供が義務化されている。
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