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JAさくらんぼひがしね組合長
佐藤勝蔵氏
佐藤勝蔵氏
【インタビュー】
 -農業の現状を踏まえ、地域のJAとしての役割とは。

 「生産者の高齢化や後継者不足など農業を取り巻く環境が厳しさを増す中、近年は気象災害による農作物被害も大きな課題の一つだ。そのために一定の発生条件を素早く的確に把握する予知対策を徹底する。気象災害が営農意欲を低下させることはあってはならない。JA単体として農業者の所得向上、生産の拡大、地域活性化の三つの柱を実現するため全力で取り組んでいる」

 「若い担い手や新規就農者の確保も急務だ。若者が魅力を感じ、生産者が豊かさを実感できる農業の実現を目指して、農業生産の維持・拡大に向けた生産基盤の強化とともに、生産量日本一を誇るサクランボや県内有数の生産量を誇るラ・フランスや桃などのブランド力向上と販売力強化に努めている。産直施設『よってけポポラ』の2018年年間売上高は15億円を超え、産地直売所では東北一。今年6月には月間2億8千万円の売り上げで日本一となり、非常に好調だ。組合員あってのJAという基本に立ち返り組織機能の効率化、組合員との関係強化も図っている」

 -どのような人材を求めているのか。

 「元気で明るく協調性がある人物を求める。当JAは8支所を有しているが、新入職員は採用後、支所に配置し、全職員に市内各地区を担当してもらっている。地域に溶け込み、組合員と膝を交えて対話し、多くの声に耳を傾ける力を養うためだ。若手果樹農家でつくる果樹研究会の活動も活発になっており、職員も積極的に参加させている。全国に誇れる良質の安定した食料供給基地として、われわれが果たす役割を認識してもらいたい。高い目標を持って生産者と活動できる職員になってほしい」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「高校の恩師で書家の鈴木盛男(雅号・鶴泉)先生からは大きな刺激を受けた。代表理事組合長に就いた後、あいさつに伺った時に『堅忍不抜(けんにんふばつ)(辛抱強く耐え忍ぶこと)』と、『斬釘截鉄(ざんていせつてつ)(き然とした態度で強い決断力がある)』の四字熟語を書いていただいた。人間味にあふれる素晴らしい人で、感謝し尊敬しており、組合長室に大切に飾っている。その言葉を胸に、揺るぎない信念を持ち続けたいと思っている」

 ★佐藤勝蔵氏(さとう・かつぞう) 旧村山農業高卒。卒業後すぐに神町農協に入組。1980(昭和55)年8月に退職し就農。2008年6月に旧東根市農協理事となり、09年10月、三つの農協が合併しJAさくらんぼひがしね理事に。13年5月から代表理事組合長。県農協政治連盟副会長、果樹王国ひがしね6次産業化推進協議会副会長なども務める。東根市大富地区出身。67歳。

 ★JAさくらんぼひがしね 2009年10月、東根、神町、山形東郷の3農協が合併。翌年3月、産直施設「よってけポポラ」がリニューアルオープンし、17年8月には来場者数500万人を達成した。18年度の販売取扱高は64億996万円。組合員数5016人、役職員数計180人(今年2月末現在)。本所所在地は東根市新田町2の1の10。

【私と新聞】コミュニケーションに必須
 山形新聞と業界紙は毎日読むという佐藤勝蔵組合長。山形新聞の1面から順に目を通すことから一日が始まる。山形新聞は長く愛読しており「私にとって大切な情報源。テレビやインターネット、SNSで得られる情報もあるが、これだけ多分野の情報を一度に得られる媒体はない」と話す。朝礼や会合のあいさつのネタを紙面から得ることも多く、「コミュニケーションを図るのに必須のアイテム」とする。さらに記事は少ない文字数で要点を押さえ、分かりやすいとも。「今後も幅広い地域情報を提供してほしい」と期待を寄せる。

【週刊経済ワード】ダイナミックプライシング
 需要と供給に応じて商品の価格を柔軟に変動させる仕組み。定価販売で商品が売れ残ったときや、より高値で売ることができた場合の機会損失を減らす狙いがある。国内では航空券やホテルの宿泊料金のほか、駐車場料金や小売業などでも導入や実験が進んでいる。人工知能(AI)の発達で膨大なデータ処理と需要予測が可能になったことが背景にある。
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