NIBフロントライン

モンテディオ山形社長
相田健太郎氏
相田健太郎氏
【インタビュー】
 -業界の現状と、求める人材は。

 「サッカーはあこがれの世界かもしれないが、決して特別ではない。フロントスタッフとして、どういうイノベーションを起こすことができるのか、地域に何をもたらすことができるのか。経済効果にこだわれる人たちが集まってこないと、チームの経営はうまくいかない。風呂敷を広げすぎてもいい。アグレッシブな人たちを必要としている」

 「国内外の大物選手を獲得しているJ1神戸は、その方針を長年にわたって維持し魅力的なチームを作り上げた。一方で都市部のクラブは、遊技施設など他にも魅力的なコンテンツがあり、集客を図る上でのライバルが多い。その点では、山形のような地方クラブの方が強みを持っているのではないかと思う。確かに資金面の問題はあるものの、自分たち次第で状況を変えられる。新型コロナウイルス感染拡大に伴いテレワークの導入が増えている今の状況は、ある意味、日本の働き方を変えるかもしれない。ビジネスに距離は関係ないということであり、地方クラブの将来を描くことにつながるかもしれない」

 -育成法は。

 「現状否定をして、今、やっていることを正解だと思ってほしくない。毎試合、ホームのNDソフトスタジアム山形(天童市)が満員になっているのであればいいが、そうではないし、チケットが飛ぶように売れているわけではない。(昨年の平均観客動員は約8千人で)半分ほどしか席が埋まっていないのだから、『過去にこうしてきたから』と言って継続することは愚かだ。今までのやり方を肯定しつつも、現状を見直していくことを求めたい」

 「例えば(自身就任後に)会議の在り方を変えた。部屋に入って決められた時間に会議を始めるのではなく、気になったことをいつでも話し合うようにしている。限られた人だけが情報を知っているのではなく、共有文化が重要だと考えている」

 -仕事上、影響を受けた人物は。

 「プロ野球の楽天時代に共に働いた立花陽三社長。目標達成のために何が必要なのかをシンプルに、明確に示してくれた。2013年に楽天が優勝できたのは、フロントと現場という縦割りをなくし、互いをリスペクトしながら観客動員などに取り組むことができたからだと感じている。年上、年下の年齢に関係なくひたすら意見を交わしていったことが大きいと思う」

 ★相田健太郎(あいた・けんたろう) 東洋大経営学部卒。不動産会社勤務を経て2003年、J2水戸の運営会社に入社。07年にプロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスを運営する楽天野球団に移り、新規営業を担当した。17年にJ1神戸を運営する楽天ヴィッセル神戸に出向し、強化部長などを歴任。南陽市出身。45歳。

 ★モンテディオ山形 1984年、NEC山形サッカー同好会として発足。県や県サッカー協会が中心となって社団法人県スポーツ振興21世紀協会を設立し、99年のJ2創設と同時に参戦した。2008年に初のJ1昇格を決めた。14年、トップチームの経営力強化を目的に株式会社化。資本金1000万円、社員約40人。本社は天童市山王1の1。

【私と新聞】県内を知る必須アイテム
 相田社長は4歳から小学3年までアルゼンチンで暮らした。帰国後、日本語を覚えるようにと両親から渡されていたのが新聞だったという。大学時代は全国紙に親しみ、「社会の流れを把握するのに役立った。読んでいて良かったと思う」と振り返る。

 モンテディオ山形の社長に就任後、県内の動きを知るためにも山形新聞は欠かせないアイテムになった。試合の翌日に掲載されるチームの記事も必ずチェックする。最近は新型コロナウイルスに関連するニュースが多くを占める。正しく、的確な情報を深掘りして伝えるメディアの重要性を指摘しながら、気持ちが沈んでしまいがちな状況だからこそ「ささいなことでもいい。明るく、喜ばしい話題を載せてほしい」とも話す。

【週刊経済ワード】パナの新型コロナ対策
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2月、東京・中央区の拠点に勤める社員約2000人に原則在宅勤務を指示した。4月1日には新入社員に自宅でウェブサイトを見てもらう「オンライン入社式」を開催。その後2週間の研修もウェブサイトを通じ実施している。政府の緊急事態宣言を受け、原則在宅勤務の適用範囲を7都府県に拡大した。
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