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ヤマコン食品社長
長谷川晃一氏
長谷川晃一氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「本県はこんにゃくの消費量が全国1位となっている。昨年の1人当たり消費単価は3500円ほどで、2位の宮城県は約2500円、全国平均は約1800円だった。本県では芋煮会をはじめ、祭りやイベントでこんにゃくを食べる機会が多い。中でも玉こんにゃくは、観光客だけでなく多くの県民に買っていただいている」

 「一方で食生活の変化や高齢単身者の増加により、消費額そのものは年々減っているのが実情だ。全国こんにゃく協同組合連合会の加盟社数は1989年度に2098社あったものの、2019年度は222社に減少している。本県の組合員数は20年前に25社あったが、現在は17社だ。後継者不足により、今後10年で廃業する会社の増加が懸念されている」

 -力を入れている取り組みは。

 「夏場用に『冷たい玉こんにゃく』の販売を始めた。新たな商品をいろいろ出していかなければならないし、既存商品の食べ方の提案も重要だと考えている。例えば玉こんにゃくは、長時間煮込まないとおいしくないと思われているかもしれないが、そうではない。私の会社では、からいりして、しょうゆでさっと煮て出すのが元々の食べ方としていた。できたてがおいしいので、家庭での作り方の発信も大切になってくる」

 -求める人材と育成法は。

 「人材を求めるというよりも、人に選んでもらえる会社になることが大事だと思う。知名度をもっと上げて『こんにゃくが好きだからぜひ働きたい』と言われるようにしたい。玉こんにゃくの元祖メーカーというプライドもある。自信を持ち、安全で安心な食品を作れる人材に育ってもらえればありがたい。先入観や性別にとらわれず、誰もが同じ仕事に関われる職場づくりも重要だ。以前、製造を主導する役割は男性が担っていたが、今は女性にも担当してもらうようにしている。育児中の従業員のサポートも大切にして、女性や若者の定着を図っていきたい」

 -仕事上、影響を受けた人物は。

 「一人は、大学卒業後に働いた輸入車ディーラー時代の上司。お客さまは会社の上役の方が多い中、言葉の使い方や接し方などを学ぶことができ、社会人としてのベースをつくってもらった。もう一人は、今は会社の会長を務める父(松寛さん)。『若いうちから経験を積んだ方がいい。サポートする』と言われ、16年に私が社長を引き継いだ。父は長くこの業界にいて、顔が広く知識も豊富。非常に尊敬している」

 ★長谷川晃一氏(はせがわ・こういち) 日大山形高、東北文化学園大総合政策学部卒。福島県郡山市での輸入車ディーラー勤務を経て2011年、家業のヤマコン食品入社。16年9月、5代目社長に就任した。山形市出身。37歳。

 ★ヤマコン食品 1887(明治20)年、山形市印役町に長谷川松四郎こんにゃく店として創業。みたらし団子にヒントを得て玉こんにゃくを考案し、1953(昭和28)年、業界初となる玉こんにゃく製造用機械を開発した。69年現在地に工場を建設し移転。87年に創業100周年を迎え、社名をヤマコン食品に変更した。こんにゃく、ところてんなどの食品製造を手掛ける。資本金2900万円、従業員(パートを含む)16人。本社は山形市漆山字梅ノ木2015。

【私と新聞】成績掲載、いい思い出
 新型コロナウイルス関連のニュースがあふれ、日々状況が変わる中、長谷川社長は「本県への影響などを知るには山形新聞が一番」と話す。日頃から地域のページに目を通し、山形市外で行われているイベント、文化に関する話題を読むのが楽しみだという。

 高校時代は野球部に所属、ポジションはキャッチャーだった。昨年まで、山形新聞などが主催する山形実業人野球大会に「レッズ」の一員として出場。県内最大のモーニング野球大会に「出張が入っていなければ何が何でも早起きして試合会場に行った」と笑う。個人成績が本紙に掲載されたことは、いい思い出となっている。

【週刊経済ワード】国際通貨基金(IMF)
 国際金融システムの中核機関でブルガリア出身のゲオルギエワ氏がトップの専務理事を務める。1944年に設立が決まり、米ワシントンに本部を置く。現在は189カ国が加盟。加盟各国の経済状況を点検し、必要な場合は助言、監視活動を行う。新型コロナウイルスの感染拡大後は途上国への緊急支援も加速。IMFがまとめた報告書は、さまざまな国際会議の討議資料にもなる。
(ワシントン共同)
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